ぬくもりの花園黒と白の百合が咲き誇る咲く邸宅の中の小さな温室。そこは黒百合の当主であるルイのお気に入りの場所であった。
手ずから水をやり、時には手入れをする。使用人に世話を任せることはしない。何故ならこの場所はルイとその番である、白百合のツカサだけの花園だからだ。
「ツカサくん……」
ルイ以外誰もいない温室に小さく呟きが落ちる。
その場所でルイが考えるのは、最近のツカサの様子だった。彼はとても素直な人物で、嘘をついたり誤魔化したりするのが下手である。
そんなツカサが数日前から頻繁に街へ行き、何かをしては屋敷へ帰ってくるようになった。
真っ先に考えたのは、ツカサが何かに巻き込まれている事態が起きているということ。
けれど何か思い悩んだ雰囲気はなく、何かトラブルがあれば共有するように『約束』したため違うのであろう。
2765