炬燵.初冬の候、外は少し肌寒くなってきていて葉物野菜がなんだか恋しくなる季節。
30円安くなった白菜を見て、今日は鍋にしよう、そう思ったのが丁度二時間前。その他の材料も買い込んで、先生の家の扉を開けたのが丁度一時間くらい前だ。
「先生、もう少しでできますからね」
そうリビングに居る先生に向かって声をかける。先生からの返事は聞こえないけど、いつものことなので特に気にせずそのまま調理を続ける。
ザクザクと長ネギを切る横で、ぐつぐつと鍋が煮える音が聞こえる。後ろからは炊飯器がふーっと息を吹き出す音とお米の香りがしてきて、何だか忙しない。けれど、それが料理のラストスパートって感じがして僕は好きだ。
さっき切ったネギを鍋に入れて、そこから醤油とお砂糖を加える。黄金色の汁が醤油色に変わったのを見て、僕は軽く味見をする。
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