星が生まれる瞬間を見た者はいないらしい。長くを生きる人が観測したことがないと言うのなら、各時代の天文学者が論文を発表していないのならば、夜空とは、原初からこんなにもきらきらしかったのだろう。
そこで、星はどのように生まれたのか、と空想するのはある種の幼さかもしれない。
そしてそんな空想に返る応えがあるのなら、きっと、それは優しさだ。
案外劇的なものではないかもしれないよ、と隣の佳人は悪戯のように嘯いて、眩い輝きをひとつ空に増やしては、柔く目を細めていた。
楽しげな師の姿を憶えている。戯れだとしても、空想に付き合って立てた仮説が嘘でないと思えてしまえば、忘れ難かった。
たとえ、空に映されたあの光が、優しさの有効期限と共に消えたのだろうとも。ふと空を眺めた時、星々が瞬いたあとの瞼の裏の残光に、あの星擬きを思うくらいには。
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