ホットケーキの日(1/25) ふわりと鼻をくすぐる甘い匂いに重たい瞼を上げる。
いつものように日付が変わってから帰ってきて、睡眠というにはおこがましいほどの短い休息で日頃の疲れが取れるはずもなく。時計を見れば朝の六時。頑張ればあと数分はまごつける時間。
だけども何だか良い匂いがするから。
疲労の残るまぶたを擦りながら自室を出る。素足の裏から廊下の冷たさがよじ登ってくるが、目的地はすぐそこだ。少し歩いた目の前のドアを開けると。
「しあわせのにおいがする……」
ぐんと強くなった、あまくてやさしい、そしてどこか懐かしい匂いに独歩の眠たげな目尻がふにゃりと下がる。
「おはよ、独歩ちん」
カーテン越しの窓の外はまだ薄暗いのに、まるでここだけ先に日の出が訪れたような、眩くて柔らかな金色が独歩を迎えた。
2018