放課後の教室で抱き合いながら手紙を破り捨てた 長い夏の陽もついに落ちてお開きになった部活の帰り、たまには一緒に帰ろうかと、もうあと半年で高校を卒業する兄さんが気まぐれを起こしたので、兄さんの待つ高等部の教室を訪ねたら、おれと入れ違いに女子生徒が足早に立ち去って行った。
夕陽の朱色が微かに残る教室には他にもう誰もいない。
夏服を教師に叱られない程度に着崩した兄さんはおれに気付いていたのだろう、鞄に本を仕舞いながら立ち上がった。
机にはおそらく今さっきの女の手紙だけが残される。
「またかよ」
「またさ」
イタチがもてるのは今に始まったことじゃない。
まったくこんなクソ兄貴のどこがいいのか、おれにはさっぱり分からない。
おれがじっとその手紙を見ていると、兄さんは何を思ったのかおれを抱き寄せ、背に回した手で手紙を破り捨てた。
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