二千五百五十円の価値ジュージューとなる油と肉の音。ゴウゴウと頭上で響く換気扇。
「なぜ、こんなところへ?」
目の前の男に腕を掴まれたまま半ば引きずられ「二名だ」と店員に伝えた男は浮葉に一瞥することもなく席に備え付けのタブレットを凝視している。
「あんた、食にこだわりはないだろう?」
浮葉の疑問に答えることもなく、シャツの合間から死人花を覗かせた男は質問を質問で返す。自分の疑問には誠実に答える門下生が脳裏をよぎれば、この男とはまともな会話の応酬が難しいことを思い出した。
「そうですね、特には」
みっともなく生き永らえた身ですから。と続ければ男の口元があがる。自分の身を売り出した者同士故か、このような自虐ともとれる会話でお互いの矜持をつつき合う。
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