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    kirikirid

    ナギヴァンとフェイキスとネオロマ腐
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    kirikirid

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    【浮大】
    浮葉様BDカドストがあまりにも悲しいので大我きゅんに焼肉に連れて行ってもらった

    #浮大
    greatAndSmall
    ##ネオロマ腐

    二千五百五十円の価値ジュージューとなる油と肉の音。ゴウゴウと頭上で響く換気扇。
    「なぜ、こんなところへ?」
    目の前の男に腕を掴まれたまま半ば引きずられ「二名だ」と店員に伝えた男は浮葉に一瞥することもなく席に備え付けのタブレットを凝視している。
    「あんた、食にこだわりはないだろう?」
    浮葉の疑問に答えることもなく、シャツの合間から死人花を覗かせた男は質問を質問で返す。自分の疑問には誠実に答える門下生が脳裏をよぎれば、この男とはまともな会話の応酬が難しいことを思い出した。
    「そうですね、特には」
    みっともなく生き永らえた身ですから。と続ければ男の口元があがる。自分の身を売り出した者同士故か、このような自虐ともとれる会話でお互いの矜持をつつき合う。
    「じゃぁこれでいいだろ」
    目の前の男、大我が数度タブレットをタッチすれば浮葉には紙のメニューが渡される。早く受け取れという視線に受け取れば、開かれたメニューには「豚肉・牛肉食べ放題メニュー」と記載されていた。そもそも浮葉と大我が二人でこのような焼肉屋へ行く理由もなければ、浮葉と大我が個人的に親密というわけでもない。浮かぶ疑問を言葉にする前に、先ほどと同じ質問だと気づき口を閉ざした。同じことを聞いたところで違う答えが返ってくるとは思えないからだ。
    「適当に肉頼んどいたぜ。野菜はあんたが勝手に頼みな。坊ちゃんでも注文ぐらいはできるだろう?」
    大我が注文したであろう肉を店員から受け取り、トングで焼き網へと乗せていく。席に届けられた皿には全て赤い肉であった。先ほどの言葉通り、野菜は浮葉が頼まなければいけないらしい。
    「こだわりがないと言いましたが、栄養は前提ですよ」
    隙間のない網に、食べ放題に含まれているサンチュを二セット注文を行う。きっと焼き網は生肉で埋もれたままなのだろう。
    「何言ってる、肉はいい。たんぱく質、ビタミン、アミノ酸、ひとまずのものは摂取できるからな」
    「まぁ、そういうことにしておきましょう」
    運ばれたサンチュを当たり前のように大我が一皿、奪っていく。
    「そして、食べ放題なら野菜もとれる」
    サンチュに巻かれた肉を一口で食べ、口の端についたタレを親指で拭った。

    そうして九十分がたてば、タブレットには食べ放題終了という文字が表示され画面が動かなくなる。
    「ん、もう終わりか。なら、一人2550円な」
    「おや、君から誘ったのに私も払うんですか」
    「奢り合うような仲ではないだろう?」
    食後の緑茶を啜り、わざとらしいため息をつく。その値段ならば、CDを購入した方が有意義な使いみちである。
    「人には懐事情というのがありますよ」
    「あんたはそんな安値じゃなかったはずだぜ」
    冗談の重ね合いに腹の底から込みだす冷嘲。この男と過ごす時間は不快なようでいて、浮葉の居場所が地獄であることを自覚させる。運良くあった硬貨に千円札を二枚、机に置けば大我が受け取り席を立つ。
    店の出入り口をくぐり、寮への道を戻る秋の夜風が浮葉のストールを揺らした。自分を慕う門下生でもなく、朝陽のような彼女でもない、同じ世界の人間と食べる食事とはこのような味がするのだと、初めて知り得たことであった。
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