生者の特権バーソロミュー・くまに襲われた直後の話
すでにできてるゾロサンです。
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海の上を漂う船は、一刻たりとも静止することはない。
天井から吊るされたランタンは手元を照らすのに充分な明るさだ。外から聞こえてくる寂しげな波の気配と船内の静けさは、サンジの耳によく馴染む。
その空気を切り裂くように、切れの良い包丁を左の手の平で勢いよく押しこむと、まな板は深みのある木製の音でダンッ!ダンッ!と音を立てて受け止めた。
普段であれば心地よいその音が、今はただの発散の手段としている自分にも苛立つ気持ちが抑えきれなかった。
腹の奥で煮えくり返る感情故にいつもより余計な力を込めてしまい、けれどそれにしては手際よく、動き続ける船の揺れに動じることなく、均等に刻んだ食材を火にかけた鍋へ静かに投入した。鍋の中を掻き混ぜながら、溜息をつく。
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