山奥の村で消息を絶つふたりそれはなんてことない、ただの、ちょっとした旅行から帰る道中での出来事だった、はずなのだ。
ハンドルを握っていた輝さんは突如車を停車させ、ペダルの調子がおかしい、と怪訝そうに呟く。
出来る範囲で試行錯誤してみたものの、その場では解決することができなかった。このまま進もうにもしばらくは山道のため、不安が拭いきれない。専門業者に連絡したいところだったが、携帯の電波は不安定だ。
ここに留まっていても仕方がない。この辺りの村のほうへ向かってみることにした。もう日付も変わろうという頃だから電話を借りることは難しいだろうが、せめて電波が入ることを期待して。
暗い山道というのはそれだけで不気味だ。足元で砂利が擦れる音や枝の折れる音がやけに耳障りに聞こえる。
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