見ることは信じること チョコレート作りにはテンパリングという作業がある。
テンパリングとはチョコレートに含まれているカカオバターを分解して細かい粒子に結晶させて融点を同じにするための温度調整のことだ。これが一番重要な工程で、味を決める大事な作業である。温度計と睨めっこしながら混ぜ合わせる。失敗したら口当たりが悪くなるから気を使うし、集中力が必要になる。
こうした工程に向き合う度に、菓子作りは実験に似ていると律は思う。レシピ通りに作ればおいしいチョコレートができると仮定して、再現出来るまで何度も作るからだ。
先人の残したレシピは再現性のあるものなので、同じ通りに作れば理論上同じものが出来上がる。だが、言語化されていない部分でもテクニックを要するものなので、一年ぶりに作ると毎回微妙な味に仕上がって、二回目、三回目と繰り返すうちにだんだん食べられるものになっていく。
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