チャイナタウン事件簿① 時刻は昼を回っていた。太陽は中天へと近づき、外が眩しくなるほど建物の中は影が濃く落ちる。ここ金糸雀県の南にある半島では、もう桜が咲き始めているらしい。三月の半ばで早過ぎると思ったが、河津桜という種類の桜で、色も確かにソメイヨシノよりもピンクが強かった。青空に映える色の桜をアオリで撮った映像に、金糸雀県にもなるとローカルテレビの内容も洒落たものになるのだと霊幻は感心する。
「霊幻さん、片付け手伝ってくださいって!」
店内の喧騒に負けない芹沢の悲痛な声が奥から聞こえてくる。レジで立ったまま、今まで見ていた入り口側の天井の角に設置された薄型液晶テレビには、ローカルテレビのアナウンサーによる海鮮丼の食レポが字幕で映し出されていた。
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