緋き尾は引き トマトの枝を切る。もう収穫の時期になった。普段は園芸屋に任せているけど、苗を植えるとか、収穫とか、そういう節目の時だけは絶対自分でやるようにしてる。残り20分。最初のアラームが鳴る。アラームはあと2回。
「よお」
ドアの方から声がした。遠過ぎて誰呼んでんだか分かんないその声が私に向けられた声だって、聞いたことある声じゃなきゃ分かんなかった。
「久しぶりね。ジェタークCEO」
「それやめろ」
「他になんて呼ぶのよ」
目の前のトマトをまたひとつ切り取ってから、背中のドアへ振り向いてあげる。ドアの正面、廊下の向かいに、見えるように腕を組んで、ピンクの前髪が立っている。グエル・ジェターク。
「愛する旦那とでも呼べって?」
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