その目には、見覚えがあった。
ナンバと足立さんに指摘されて、俺はその既視感に気が付いた。二人が言うには、さっちゃんは俺への対応だけが違う、ということだった。別に贔屓されている訳じゃない。さっちゃんは俺たち三人に平等に優しい。俺一人だけを特別扱いしているとは思わない。お茶は平等に淹れてくれるし、俺たちの誰が煙草を咥えても、さっちゃんは火を点けてくれる。(そんなことしなくても構わないと言ったけど、職業病だと彼女は笑った。)
それでも、二人から見るとさっちゃんの俺への扱いだけが違うのだそうだ。それが声色なのか、態度なのか、分からない。でも少しだけ、俺にも引っかかるものがあった。
瞳だ。俺を見る、その目。真っ直ぐに視線が合って、不意に逸らされる、その秒数。
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