こうべをあげよ、雄々しき子《後編》「あたしはね、むんむんは人殺してると思う」
6畳ほどの休憩室に置いてあるパイプ椅子に腰掛けて、小山ユミは鯉登に言った。
休憩室には折り畳み式の簡易な長机が2つ、中央に置いてあり、その周りにパイプ椅子が4脚並べられている。長机の上にはみんなで持ち寄ったお菓子が置いてあり、小山はその中のチョコチップクッキーをもぐもぐ食べていた。鯉登は給湯室に持ち込んだ茶葉で淹れた紅茶を、自前のティーカップで飲んでいた。
「むんむん?」
「店長のこと。店長さ、なんでか重いもの持つ時、むんて言うでしょ。あれちょっと笑っちゃうんだ。名前もムーンだからむんむん」
「あんまりセンスがいいとは言えないな」
「いーの、あたしが密かにそう呼んでるだけなんだから」
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