運命の行方火葬炉に吸い込まれていく白い箱を眺めていた。
ここには遺族も親族もいない、生涯孤独だったと思う。
この人となら上手くやっていけそうだったのにな、なんて手遅れな願いだ。
施錠された扉の向こうで焼かれているだろうそれを少し眺めてから断熱扉に背を向けた。
「始まった?」
「はい、今から2時間ほどでしょうか」
「残った遺骨はどうするの?」
「焼き切りを願いたかったのですができないと言われてしまったので、残るのであればペンダントにでもしようかと思っております」
「へぇ、少し妬いちゃうかも」
「もし殿下が亡くなった時はそうしてさしあげますよ」
「え〜?まるでぼくが死ぬみたいな言い方やめてよね!悪い日和!」
待機室。今は2人。
もうしばらくはここに訪れはしないだろうが。
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