犬にやきもち 今日はお互い午後から仕事。お昼までは個人的な用事もなく、短いながらも完全な自由時間だ。こうなると、出久くんが言い出す事はもう決まっている。勿論私の返事も。
デートしましょう、と誘われて、足を運んだ先は近所の公園だった。今度はもう少し遠出をしたいとか、夕飯は何がいいとか、他愛もない会話を楽しみながら散歩をするだけの時間も、出久くんは全力で楽しんでいる――筈、だったのだが。
「浮かない顔してるな」
やけに大人しい恋人に声を掛けると、はい、と元気のない声が返ってくる。一体どうしたのか、見当もつかない。会話に不穏なところは無かったし、散歩中の出来事と言えば、大きな白い犬に出会って撫でさせてもらった事くらいしか思い付かない。
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