幸福ー花なんか別に好きじゃなかった
かと言って別に嫌いという訳でもなく、可もなく不可もなく
お祝いには定番で、手軽で、案外みんな喜んでくれるし、こちらの気持ちも込められる……
それくらいの認識で贈ってきたように思う
ただ、ここ数年は少し違ってきているけれど
それも、特定の相手にだけだけれど
「はい」
「ん?」
ただいまを告げたそのあしで、キッチンで珈琲をおとしていた雪祈へ花を渡す
紫のラナンキュラスを1輪
「おかえり。……これなに?」
「ラナンキュラス」
「ふーん。…今回は随分かわいらしいのな。」
ほぼおとし終わった珈琲を放置して、花瓶花瓶〜と棚を探し始める雪祈
テーブルにのっていたマグカップに珈琲を注ぎおわる頃には、細いガラスの1輪差しに入ったラナンキュラスは食卓テーブルへ飾られていた
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