貴方との距離 「また来たのか……。別に、嫌とは言っていない」
統合失調症。そう診断された彼女は、歌舞輝町の路地裏で暴れていたところを七篠メイに発見され、一番街医院に運ばれてきた。先月のことだっただろうか。
雪原和哉は闇医者だ。であるから、統合失調症に効く薬を処方出来ない訳では無い。が、彼女にオーバードーズの癖がある事を前回の来院時に知ったのであまり強い薬は出さないようにした。
だと言うのにも関わらず、彼女は性懲りも無くオーバードーズを繰り返し、震える足で訪ねてきたのであった。
彼女は拒絶される事に酷く嫌悪感を覚えるようであるからなるべく優しい言葉を、と「嫌とは言っていない」と付け加えたことによってか、それとも敬語ではなく友人と話すかのような口調に変えたからかは分からないが、彼女に若干の安堵の表情が見えた。
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