掌に当たる息吹を「生きてる」
寝息を立てる唇の上に自分の掌をかざす。
あの襲撃と、一瞬起きた友の死。
それからほぼ毎晩、自分が夜中に目覚めた時に、友の吐息を確認するようになった少年。
掌に当たる暖かい吐息を確認して、また寝床に潜り込む。
今のところ、全てに掌への暖かな息吹を感じて安堵できている。
抱き寄せた時に見た顔を思い出してしまう。
見開かれているのに虚無を見る瞳孔を。
いつもは忙しなく動いていたのに、今はぴくりとも動かない眉を。
こんな時に知りたくなかった、すっと通った鼻筋を。
血を滲ませて、薄くだらしなく開いた唇を。
青白い顔。
血の気が引くって、きっとああいう色。
それを少しでも忘れたくて。
今日も確認した友の顔はもちろん。
ちゃんと穏やかな寝顔で。
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