「ーーーありがとうございます。ではまた」
チャリーン、リーン、とアンティーク調の心地よいベルの音が奏でた。ロロは両親へ綴るレターセットをいつもの店で買い、お気に入りのパン屋で昼食用のクロワッサンを買うために足を向けた。
花の街は美しい。ロロは心の底から思う。しかし魔力によって保たれてるこの美しい街をロロは自らの炎で燃やそうとしたが失敗に終わってしまった。
それが夢だったのか、何事もなく、花の街はまたいつも日常へと戻る。
『ロロさんはやっぱ優しい人ですね』
陽だまりのような笑顔を向けて笑う一人の少女。舞踏会でユウがロロにかけた言葉だ。
この女は何を可笑しな事を言うのだ、と、この世界から魔法を消し去ろうとし、魔法を使えないユウにも危害を加えた人間に対して掛ける言葉ではない。だだの嫌味かと思ったが、その黒い瞳はただ純粋にロロに対して、そう思って向けた言葉だと分かる。だから何と返したらいいのかと考えていると、さらにユウはロロを惑わせることを口にした。
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