『背中は任せたぞ、戦友』
古びた娯楽映像から流れる聴き慣れた単語に、上滑りしていた意識が途端にクリアになる。
ノイズが走るフィルムの中、拳を構え背中を預け合う男たちの状況はまさしく窮地そのものだった。数十もの人影が追い詰めた獲物をぐるりと取り囲み、牙剥く時を見定めている。
ふと、鋼鉄がアスファルトを擦る甲高い音が脳裏を掠める。立ち上る硝煙と火花、鈍く響く発砲音とけたたましいアラートが映像ではなく己の記憶によるものだと気付く頃には、フィルムの中では既に派手な大立ち回りが始まっていた。
顔目掛けて振りかぶられた腕を、一人が身を屈めながらいなす。的を失いよろめく相手の後頭部めがけ、もう一人が肘を振り下ろした。骨の軋む音か男の悲鳴か、鈍い音を立てながら追手が一人床へと沈む。フィルムの中と脳裏に浮かんだ光景が重なる。軽量機の機動と途切れぬ弾幕で重装機動砲台を牽制する僚機の傍ら、開いた側面へ持てる火砲の全てを叩き込んだあの感覚を思い出す。
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