不器用な男の話「オヤジ!ビールくれ!」
「ねーちゃん、オーダー頼む」
ここはとある街の酒場。
ハンターギルドと併設されているこの憩いの場は今日も元気なハンター達の声であふれていた。
オヤジと呼ばれ親しまれている酒場のマスターはそんな店内を眺めつつ、逞しい腕でハンター達にビールを注ぐ。彼はこの騒がしくも元気なハンター達の姿を見るのが好きだった。
その中で黒髪の男がひとり、静かにビールを飲んでいる姿が目に入る。眼光鋭く歴戦の風格が漂うその男、しかし油断していると見逃しそうな雰囲気なのは、自然に溶け込む術に長けているハンターの“さが”か。
オヤジは自分用のビールを注ぐと、それを持ってその男の卓へと向かった。
「よお、ディノ!久しぶりだな!やっと遠征から帰ってきたのか?」
2176