ふと、音楽が聞こえた。それは綺麗なヴィブラフォンの音。
その音色に、心を打たれてしまった。
ああ、この音に、わたしの想いを乗せてみたい。
そう思ってしまうほど。
口を開く。
途方もない時間だけ
また過ぎていく
此処は理想郷ではない
ましてや描いた未来じゃない
終わりのない未来など
なんて下らない
夢の隙間に問う
私は何処へと行くの
遠い遠い先の方へ
痛みと歩いていた
騒がしい街の声が頭に響く
夢の底でもがくのなら
この夜をいっそ喰らってしまいたい
呆れる程に傍にいて
愚かでいい 二度とない
今を生きていたいだけ
それだけだ
……ハッとした。いつの間にか歌ってしまっていたようだ。
ヴィブラフォンを奏でる彼女は驚いたようにこちらに近づいてきた。
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