都合のいい男「ちょっと、話がある」
食堂で遅めの夕食を貰って食べていると、背後からローに声を掛けられた。誰もいない食堂なのでここで話してもいいと思ったが、こんな風に言うということはつまり、あまり人に聞かれたくない話なのだろうとも思う。
ポーラータング号は、珍しく潜水せずに海上を進んでいた。そろそろ次の島に着く予定だからだ。そうなると、海の上を見張る船番が必要になり、この船の潜水設備の操作にまだ慣れきらないおれでもできるその仕事に立候補したのだ。そういうわけで夕飯の時間を逃し、食事の時間が遅くなっていた。
「おう。食べおわったら部屋に行けばいいか? それとも今すぐか?」
「食べ終わったらでいい」
「じゃあ、そうするな!」
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