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    isz_v3

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    isz_v3

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    ※コラさん生存ハートクルー加入if
    ※付き合い始めたコラロ

    都合のいい男「ちょっと、話がある」
     食堂で遅めの夕食を貰って食べていると、背後からローに声を掛けられた。誰もいない食堂なのでここで話してもいいと思ったが、こんな風に言うということはつまり、あまり人に聞かれたくない話なのだろうとも思う。
     ポーラータング号は、珍しく潜水せずに海上を進んでいた。そろそろ次の島に着く予定だからだ。そうなると、海の上を見張る船番が必要になり、この船の潜水設備の操作にまだ慣れきらないおれでもできるその仕事に立候補したのだ。そういうわけで夕飯の時間を逃し、食事の時間が遅くなっていた。
    「おう。食べおわったら部屋に行けばいいか? それとも今すぐか?」
    「食べ終わったらでいい」
    「じゃあ、そうするな!」
     人前に、というかふたりきりのとき以外のローは、きちんと「船長」の顔をしている。もちろんこの海賊団を束ねるのはローなので、それは当たり前なのだけれど、小さかった頃を知っていたり、二人きりのときは案外かわいいところもあるのを知っているおれにとってはローの成長が感じられて嬉しくなる。もちろん甘えてきてくれる時だって嬉しい。
     厨房から水のボトルを取ってきたらしいローはそのままおそらく自室へと引っ込んでいる。明日の朝頃にはおそらく島に着くだろう。夜の番はペンギンがしてくれることになっていた。

     待たせるのも悪いので、残り少しになっていた夕飯のオムライスをかきこんで食べきり、食器は所定の場所へ。洗い物については厨房担当がしてくれると念を押されている。前に手伝ったときにこの船の皿の枚数をかなり減らしてしまったのが原因だ。悪いことをした。わざとではないのだが。
     少しだけ急ぎ気味に船長室を訪ねる。この部屋のドアには窓がないから中にローがいるかは見えなかったが、さっきの話から考えて部屋で待っていてくれるのだろう。
     コンコンコン、と三回ノックすると、中から「入れ」と返事があった。
    「待たせたな、ロー」
    「思ったより早かったな。もしかして食事、焦らせちまったか」
    「いや、そうでもねェよ、もう食べきるところだった」
     そうでもなくはないのだが。でも、ローに呼ばれたなら早く行ってやりたいだろう。どういう理由であっても、恋人に呼び出されるのは嬉しいのだ。
    「早食いは体によくねェぞ」
     招き入れられた船長室、ドアを後ろ手に閉めると、ローから「鍵も」と指示があったので、ついでに内鍵もかけた。他の部屋にはないが、この船長室だけは内鍵がある。それはどうしてもローが邪魔されたくないとき用なのだと前に教えてもらった。もちろん緊急のときは非常用につけられている伝声管があるし、伝伝虫にも連絡が来るようになっている。よく訓練されたクルーたちは的確に動けるし、ローの指示だっておそらく正しいのだろう。なにせ賢い子だ。
    「コラさん? どうしたんだ?」
    「あぁ、いや、なんでもない。鍵かぁ、と思って」
     思考を飛ばしていたせいで馬鹿みたいな返答をした自覚はある。しかし、ローはそれを「なんだよ、それ」と笑ってくれたので、今のところおれはべつに嫌われていないらしくてほっとした。
    「ちょっと他には聞かれたくない話をするから」
    「サイレント、かけるか?」
    「あぁ、頼む」
     使い慣れた自分の能力だった。おれとローを、ドームの中に囲う。そうすると外に音は漏れないし、外の音も聞こえない。
     再会して強くなったローの能力もなんだかちょっと似ていて嬉しかったのが昨日のようだ。
    「で、どうしたんだ?」
     ローは自分のベッドに腰掛けていた。その隣を示されたので、遠慮なくそこに腰を下ろす。どうした、と訊ねはしたがこうやって鍵をかけてサイレントもかけて話す内容なのだから、船長とクルーとしてではなく、恋人としての会話であろうことは想像がついた。
    「明日、島に着く予定だから話しておいたほうがいいと思って」
    「おう? そういえば付き合うことになってから初めてか? 一緒に時間が作れそうなら出かけるか?」
    「いや、そうじゃなくて……」
     ローの言葉の歯切れが悪い。子供の頃から言いたいことはまっすぐ言うタイプだから珍しい。
    「じゃあ、どうした?」
    「……この船は、知っての通り男のクルーが多いんだが」
    「あぁ、まぁそうだな?」
     それは客観的事実だった。別に意図的なわけではなさそうだが。
    「だから、島につくと女のいる店に行く奴が多い」
    「あー、そりゃ、そうだろうなぁ」
     海軍の船だって同じようなものだ。男女比はだいぶ変わるが、変わったところで相手がいる奴は少なかった。海兵同士で付き合ってるやつもいないことはないが、あまり見かけない。そして付き合っていたからといって狭い船内の集団生活で事に及ぶのは難しい。つまり、結局は同じことが起きる。性欲とはどうしようもないものであって、長い船旅で一番発散に困る欲だろう。
    「だからコラさんも、行きたかったら行ってきていい」
    「はぁ?」
     隣に座っているから視線は合わなかった。けれど、何を言われたのか理解すると同時に、納得できない気持ちがこみ上げる。行っていいもなにも、おれたちは付き合ってるんだよな? それともおれはもう用済みか? そういう、問い詰めるような言葉が頭にどんどん浮かんでくる。
    「おれとしてはいても、女はまた別だろ? だからそういうのは別にいいと思ってる。ちゃんとこの船に帰ってきてくれればそれでいい。おれにもそれを受け入れるくらいの寛容さはあるから大丈夫だ」
     つらつらと続けられた言葉たちは、一つも納得がいかなかった。一つも大丈夫じゃない。何一つ納得がいかない。
    「お前ちょっと、ちょっとそこ座れ!」
    「痛ってぇ!」
     ローの首根っこをつかんでベッドから引きずり下ろし、床に座らせた。もちろんおれもその前に向き合って正座だ。だめなことはちゃんとだめだって教えてやらなきゃいけない。こいつを連れ出したあの日から、おれはずっと、勝手にローの保護者の気分でいる。恋人になった今だって、ローが間違ったことをしようとしていたら、それは正してやらなきゃいけない。年長者としてもそれはするべきことだと思っている。
    「おれはな、お前を、浮気を許すようなやつに育てた覚えはないぞ」
     する方はもちろん、される方もだ。たとえ相手がおれでなかったとしても、この考え方におれは怒っただろう。欲しいものは獲りにいくのがローだ。浮気を許すなんでそんな適当なやつでないことをおれはよく理解している。だからこんなことを言うなら理由がないとおかしい。あったとしても改めさせたい考え方だが。
    「……コラさんに育てられた覚えもねェよ」
     それは確かに正論なのだけれど。今重要なのはそれではない。
    「だとしても! おれは浮気をする気はない。ロー、お前は、お前の方が、そういう場所に行きたいからこの話をしたの……か……?」
     言いながら、そういえばその可能性は考えていなかったことに気づいた。おれたちは何度かセックスをしたことがある。だが、いずれもローはボトムだ。ローだって男なのだから、抱かれるより抱く側がいい日もあるかもしれない。そして、それをおれがさせてやれるかというと、現実的に難しいような気がする。体格的にもやりにくいだろうし、女ほどよくしてやれないだろう。だからローが女を抱きたいって言うなら、それについてはよくよく考えていかなくてはならない。おれの気持ちとしては許容できない話なのだが。だからこそよく話し合わなければいけない。大事な問題だ。

    「……おれが好きなのはコラさんだけだ。だから、女を抱きたいとは思ってない」
     その答えがあまりにもまっすぐだったから、嘘ではないということがわかる。
     でも、だとしたら尚更タチが悪いのだ。
    「お前な、そのほうがずっとタチが悪いってわかってるか? おれにはそういうことを許しておいて、自分はしないつもりだ、なんて。おれたちは恋人同士なんだろう? 対等な筈だ。お前とおれは、船長とクルーでもあるからその時はお前が上司だ。でも、恋人としてなら対等じゃなきゃならない。お前の言ってるそれは、対等とは言えない。わかるか?」
    「……うん」
     素直な返事は、子どもの頃に戻ったみたいだった。でも今はそれどころではない。
    「そもそもおまえはおれに、他の女を抱いてきてほしいのか? もしかして、おれとするのが負担になってたか?」
     そちらの可能性については考慮しなければいけない。元々受け入れる体のつくりをしていないのだ。ローの負担は大きい。できる限りいたわるようにしていても本人にしかわからないしんどさがあるのかもしれない。
    「それは……、違う。コラさんとするのは、その、好きだ」
    「じゃあ尚更、お前がそんな提案をするのは筋がと通らねェな。違うか?」
    「…………」
     すっかり叱られる体勢でうつむいてしまったローの表情は読めない。でも、自分でも自分の言っていることのおかしさをきっと理解しているのだろう。なにせローがわからない筈がないのだ。
    「寛容さっていうのはそういうもんじゃねェよ。お前なら、わかってるだろう? それに、おれに許すならおれもお前に許さなきゃならない。でもおれはお前にそういうことをしてほしくない。わかってくれるか?」
    「……コラさん、ごめんなさい、おれ、」
    「うん」
     顔をあげたローの目が、うるんでいるのがわかった。ばかやろう。泣きそうになるくらいなら、こんなこと提案するんじゃない。腕を引っ張って抱きかかえてやると、素直にしがみついてくるのがかわいかった。それでいいんだ、嫌なことはちゃんと嫌って言えるのがお前だろう。
    「コラさんには自由でいてほしかった」
     それでお前の自由が阻害されちゃ意味がないだろう。
    「何言ってるんだ、自由に生きてるよ、今」
    「……おれが束縛したら鬱陶しいだろうと思って」
    「鬱陶しいわけあるかよ。かわいいだけだ。おまえこそ、おれが浮気しないでほしいなんて言ったら鬱陶しいと思うか?」
     ローにしがみつかれている、左肩のあたりが熱い。まぁこれはすぐに冷えて濡れた痕になるだろうとわかったけれど、指摘はしなかった。きれいな黒髪を撫でてやると。ぐぅ、とこらえるようなくぐもった声がした。そんなになるほど嫌なら素直に言えばいいが、そうできないのもローのかわいいところだ。だから全部許すし、受け入れるし、撫でてやろうと思う。
    「……うれしい。……本当は、ほかのやつのところになんか行ってほしくない」
    「こんなにかわいい恋人がいるのに、行くわけねェよ」
     ぎゅうとしがみつく力が強くなったのがわかる。こちらからも強く抱き返してやると、すりすりと懐かれる。ねこみたいなやつだ。
    「コラさん、ごめん」
    「まったく、肝が冷えた。おれもういらないって言われてんのかと思ったからな」
    「……ごめんなさい」
    「いい、理由はわかったからな。でももう二度とこんなこと考えるんじゃねェぞ。おれに愛想を尽かしたのなら、そのときはちゃんとそう言ってくれ」
    「おれがコラさんを嫌いになるなんてありえねェ」
     とんとん、と背中を撫でてやっているとローのほうもなんだかもとに戻ってきたようだった。
     でも今度は少しだけ、別の事が心配になってしまう。ちょっとおれを優先しすぎではないだろうか。おれは、ローにはロー自身を一番大事にしてほしい。
    「なぁ、船長。ちょっと悪いこと、しようぜ」
    「え、なんだよコラさん。……その呼び方、ちょっと嫌だ」
     我ながら狡いなぁと思う。普段からおれはちょっと特別扱いをされていて、ローを、ローと呼ぶ。この船に乗ることを決めたときに、他のクルーと同じく「キャプテン」と呼ぼうとしたら止められたのだ。聞きなれないからやめてほしい、と。それは、おれの知らない間に海賊になっていたことに対するちょっとした照れのようなものが原因だと後になって知ったのだ。だからこの船に於いて今ではおれだけが「ロー」と呼ぶことを許されている。
    「明日、おれとローと、二人で陸に上がれるように調整できないか?」
    「え? まぁ、それは出来るが……ペンギンとシャチに見つかるとちょっと面倒だな」
     その二人はおれたちの関係を正しく理解している数少ないクルーだ。とはいえ、ローはちょっとだけ抜けていることがあるからそれなりに他のクルーにも、なんとなく、程度は察せられているようでもある。
    「まぁそこは上手くやってくれよ」
    「……おれは普段あまり陸にはあがらないからな。顔も知られてるし」
    「変装はなんとかする。それで、二人で宿を取ろう」
    「……泊まるのか?」
    「泊まる。それからお前が二度とそんなこと言いださなくなるように、体に教えといてやるよ。どれだけおれが、お前を好きか」
     つんつん、と背中をつついてやった。ちょっと狡いが、でも提案自体は全て真剣だ。女はまた別だ、なんて思えなくなるように。女よりいいんだってわからせてやりたかった。ローが二度とこんな悲しいことを言い出さないようにするためにも。そしてこんなことを言いたくなるほど思い悩まないためにも、どちらにせよ必要なことではある。
    「……わかった」
     おれは今、すごく悪いクルーだ。船長を誑かして船の予定を書き替えさせようなんて。
     これでわかったことは、どうにもローは少し、おれにとって都合のいいやつになりたがる節があるということだ。それじゃあいけない。ローは、ローの自由に生きなきゃならない。
    「……待て、わからなくていい。言い出したのはおれだが、ちゃんと予定通りにしたほうがいい。……お前、おれの言う事だからって全部きかなくていいんだからな、わかってるか? 恋人のおれたちは対等だし、船長とクルーならお前の方が上だってさっき言ったろ?」
     もしかしたら根本の解決にはなっていないかもしれなかった。おれがいちばん心配なのは、ローがローの望まない形で生きることだ。彼の船長としての矜持は汚したくない。
    「……それ、言わなきゃだめなのか」
     もうずっと赤かった耳と頬を、もっと赤くしたローが口を開く。
    「……もともとコラさんは上陸予定になってる。さっきの話をしたのはそのせいで……」
     申し訳なさそうに伏せられた目に、怒って悪かった、と声をかける。また髪を撫でてやると少し落ち着いたようだった。
    「それからおれはいつも、上陸とも船番とも、どちらにもしていない。気が向いたら降りるし、向かなければ船にいる。おれが居なくても船のことは問題ないように初めから組んである。だから、一緒に降りるのは、その、」
     あぁもう、なんてかわいいんだろうな。恥ずかしそうに目元を赤く染める恋人がこんなにかわいい。浮気なんて一瞬たりとも考えられないほど魅力的だ。
    「おれに抱かれるために?」
     わざと直接的な言葉を選んでやった。ローが望んでおれに抱かれる。その事実をおれも噛み締めたかったし、ロー自身にもしっかり刻んでおきたかった。
     こくん、と、声には出さず、しかし確かに肯定の返事が返ってくる。恥ずかしくなったようで、さっきまでと同じく肩に顔を埋めるようにしてだきついてくるローがまたかわいかった。
    「そうか、それならいいんだ。……ロー、愛してる。ちゃんと覚えとけよ?」
    「……コラさんが、明日、教えてくれるんだろ。そしたら忘れない、から」
     ちくしょう。かわいいこと言いやがって。




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