愛ある世界 [[rb:愛 > ラヴド]]は献血と同じで、貯めておくことはできなかった。それは血と同じように人間の体を健康に保つためには必須の栄養素で、特に幼少期に多量に摂取しなければならない。[[rb:愛 > ラヴド]]は愛されることによって補給できる。成長するにつけ、その量は少なくとも生きられるようになるが、無償の愛を寿ぐ両親がいなかった茨は、十七になっても多量の愛が必要だった。なぜだかそれを茨は隠して平気な顔をしているが、常に[[rb:愛 > ラヴド]]が枯渇している茨は、時折倒れてこうなってしまう。
「……あなた、本当に愛の受け取り方が下手ですね」
「……うるさい……」
倒れた茨をわたくしは、赤子にするように抱きしめてあげていた。プライドの高い茨は、他人に弱さを見せられない。愛は気を許した相手からではないと受け取れない。だからしょうがなく、茨は、わたくしなんかに頼み込む。
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