◆◆◆
「おかあさん、みて」
保育園で先生や友達が褒めてくれた絵。
お迎えの時に、お母さんもすごいね、って、褒めてくれた絵。
それとおんなじ絵を、薄暗い部屋で、短くなった色鉛筆で描いた。出来た絵を持ってお化粧してるお母さんの背中に声を掛ける。
お母さんは、ふりむくことも、返事をすることもない。
いつも、いつも、いつも。
まるで、ここに自分はいないみたい。
どうしてだろう。
いいこ、が足りないのかな。
いいこにならなきゃ。
文字を練習して、教科書を隅から隅まで読んで、先生に怒られない様に、大人しく。はみ出ないように、はみでないように。
誰も僕を見てくれない。
どこにいても、どこにもいないみたい。
でもきっと、僕がいけないんだ。
1214