まとめ目次
1.考える足
2.ラウダのパーフェクトグエル教室
3.シアターにて
1.考える足
兄は少し僕に横暴である。
と言うよりも、周りが見えなくなる時がある。例えるなら、熱量に押されて、窓から飛び降りて行ってしまうのを、ぽかんと眺めるしかないような。兄は飛び降りる過程に付随する自身への危険を省みない。これらの飛び降りには、しばしば僕が巻き込まれることがあった。
告白しよう。それがどうしようも無く嬉しい時があった。そりゃ、腹が立ったり悲しかったり、と言う気持ちも嘘じゃない。だが、兄が自身を危険に晒すとき、巻き込まれるのは何時だって僕だけ。兄は敵以外に、実の所臆病なまでに優しい。「すまん」とか「悪いが」とか軽く言って、彼が窓から飛び降りる時、手を引かれるのはきっと僕だ。
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