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    瀬木の日常
    カノヨ街ネタバレ有り

    ##幻覚

    瀬木の日常 だらりと縁側で柱にしなだれる。空は変わらず青く染まり、太陽を讃えている。日差しの眩しさに目を細める。訪ね人も来ず、悪戯に時間を過ごしてしまう。
    「ひまだなあ」
     思わず声に出たことで、自覚が押し寄せてくる。
     こういう時は何をしていただろうか。少し遠くで行き交う人――形容するならば「住人」の方が正しいだろうか――を眺めながら何をしようか思考を巡らせる。
     ここでの生活は如何せん時間がすぎるのが遅い。自ら何かすることを作らなければ空を見るか、噂話に耳を傾けるくらいだろう。この番地に住まうモノたちは各々時間をつぶす事を見つけているらしく、見た目にしても賑やかである。庭が充実している家や、自らを着飾るもの。
     どちらかと言えば、おれは前者だろう。道楽として始めた標本は、中々の出来栄えである。それを欲しがるモノたちもいるため、対価に何かしらの話を得る。きちんと話を組み立ててくるモノや、行き当たりばったりで話をするもの。面白ければ出来のいいものを渡すのがおれのスタイルだ。住人の色が出るのを楽しんでいる。
     さて、そんな話をしていればこちらに向かってくるモノがいる。相手と同じように小さく手を上げて反応を示せば、客としておれへと言葉をかけるのだろう。
     暇人の道楽に礼儀は不要である。立ち上がることも背筋を伸ばすこともなく標本やと声を掛けてきた住人を出迎える。
    「何か用があるんだろう」
     是と答えた住人は随分いやらしく笑みを浮かべた。
     今日、この後は愉快になりそうだ。住人につられ、目を細める。
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