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    ナッパ

    85_yako_p

    DONEなっぱっぱさんとの鋭百合同誌の再録です。(2022/4月)
    お題になった頭文字はLです。
    Limit マユミくんと付き合いだして──そういうことをするようになってから、わかったことがある。
    「んっ……マユミくん、しつこい……!」
     ぺち、とうなじを叩けば、ようやくマユミくんの唇が僕のからだから離れた。見えやしないからと許可した胸元とお腹はキスマークだらけだし、ずっと優しく触れられていた脇腹は未だにぞくぞくと背骨を震わせるし、繋ぎっぱなしだった手から溶け合う感覚でどこまでが僕なのかわからない。そう、マユミくんは前戯が長い。寝転んだ僕はしばらくからだを起こしていないから、マットレスにくっつきやしないかと心配になる。
    「……すまない、百々人」
    「……別に、いいけどさぁ……」
     そういえば始めて叱ったかも。マユミくんはしゅんとしていたけど、僕の二の句を受けたら嬉しそうな顔になって僕の唇に柔らかく噛み付いて舌をいれてくる。マユミくんが目を閉じて幸せそうに舌を絡めてくると、僕だって目を開いている気分ではなくなってしまうから視界を閉ざした。そうなるともう感じるのはマユミくんの舌の柔らかさと温度しかなくて、ひとつ感覚を遮断したことで耳が余計に音を拾う。
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    85_yako_p

    DONEなっぱっぱさんとの鋭百合同誌の再録です。(2022/4/10)
    お題になった頭文字はEです。地味に2ページぴったりに収めるために頑張りました
    Earth さらば地球! 僕とマユミくんは火星へと旅立った。
     情報規制とは恐ろしく、僕の与り知らぬところで火星への移住計画はずいぶんと進んでいたらしい。科学の技術は日々進化しているのだ。
     しかし残念なことに日本という国はなーんにも進んでいなかった。たとえば、同性婚に関わるあれやそれ、とか。なので恋人同士である僕とマユミくんはパートナーとしての関係を結ぶに留まっている。僕は『眉見』にはなっていないので、今もマユミくんをマユミくんと呼ぶ日々だ。はじめましてから八年間変わらない呼び名は手垢がついた年月だけ味わい深くなっていったが、そろそろ新しい風が欲しい。
     そんなところに火星移住計画だ。興味本位で取り寄せたパンフレットを眺めるに、人間がいじくりまわした火星はたいそう居心地がよさそうだった。名産品になる予定の果物はおいしそうな見た目をしているし、東京までは爆速スーパージェットスペースシャトルで二時間弱。四季こそないものの気候は温暖で大きな災害もないらしい。家賃はアイドルとして上り詰めた僕たちのお給料なら無理なく払えるし、抽選要項を僕らは満たしている。なにより、火星の法律では同性婚が認められているそうだ。きっとこのパンフレットを作った人間は日本人に違いない。特定の諸外国では当たり前に認められている権利をこれ見よがしにパンフレットに、先進的なアピールとして書いてしまうなんて。
    1970