noa/ノア
DONE[風信&南風✈] パイロットAU。この間の、隠れて泣いている南風を見つけてしまった日の夜。風信さんの家でべしょべしょに泣く南風……
⚠️暴言を吐くパワハラ上司がいます
フライトを終えて戻ったら一番にやりたいこと、それは熱いシャワーをたっぷり浴びることだ。
風信にとってそれは、フライト先でも家でも同じだった。だがやはり長距離のフライトのあとは自分の家のシャワーが一番だ。明日はオフだし映画でも見ようかなどと考えながらタオルで髪を乾かしていると、テーブルに置いたスマホの着信音が鳴った。
南風だ。タオルを肩にかけてタップする。チャットメッセージ画面が現れる。
『今日はすみませんでした。ハンカチは洗って今度お返しします』
備品室の隅で肩を震わせていた姿を思い出す。
『気にしなくていい。大丈夫か?』と返信を返す。少し間があって吹き出しが現れる。
『大丈夫だとおもいます』
しばらく指が逡巡したあと、返信を打つ。
5343風信にとってそれは、フライト先でも家でも同じだった。だがやはり長距離のフライトのあとは自分の家のシャワーが一番だ。明日はオフだし映画でも見ようかなどと考えながらタオルで髪を乾かしていると、テーブルに置いたスマホの着信音が鳴った。
南風だ。タオルを肩にかけてタップする。チャットメッセージ画面が現れる。
『今日はすみませんでした。ハンカチは洗って今度お返しします』
備品室の隅で肩を震わせていた姿を思い出す。
『気にしなくていい。大丈夫か?』と返信を返す。少し間があって吹き出しが現れる。
『大丈夫だとおもいます』
しばらく指が逡巡したあと、返信を打つ。
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DOODLE[風信&南風✈️] パイロットAU。ある朝突然、空港の麻薬探知犬と入れ替わってしまったっぽい南風。探知犬ハンドラーのモブ君視点。
隅々までありえなさ120%なので、頭をカラにしてお読みください🙇
「今日はどうしたんだ?」
覗き込んだケージの中にいるのは、黒の雄のラブラドール。麻薬探知犬の彼は、ハンドラーの自分の相棒だ。まだ探知犬になって一年ほどだが、訓練の時から落ち着いた優秀な犬だった。だが、今朝ケージに来ると、ケージの中をうろうろ歩き回り床のあちこちを嗅いでいる——まるで見知らぬところに来たように。
だが、餌の皿を置くと、匂いを嗅いでいつもどおりすぐに平らげたので、体調が悪いわけではないらしい。
「さあ、今日も仕事だぞ」
ケージから出し、空港へ向かう。
リードを引いて税関を行きかう客とスーツケースの間を歩きまわる。朝は心配だったが、荷物を次々に嗅いでまわる様子はいつも通りで安心する。
だが、突然ピタリと止まり、空気の匂いを嗅いだ。何か見つけたのかと緊張する。と、突然リードを引っ張られた。
2523覗き込んだケージの中にいるのは、黒の雄のラブラドール。麻薬探知犬の彼は、ハンドラーの自分の相棒だ。まだ探知犬になって一年ほどだが、訓練の時から落ち着いた優秀な犬だった。だが、今朝ケージに来ると、ケージの中をうろうろ歩き回り床のあちこちを嗅いでいる——まるで見知らぬところに来たように。
だが、餌の皿を置くと、匂いを嗅いでいつもどおりすぐに平らげたので、体調が悪いわけではないらしい。
「さあ、今日も仕事だぞ」
ケージから出し、空港へ向かう。
リードを引いて税関を行きかう客とスーツケースの間を歩きまわる。朝は心配だったが、荷物を次々に嗅いでまわる様子はいつも通りで安心する。
だが、突然ピタリと止まり、空気の匂いを嗅いだ。何か見つけたのかと緊張する。と、突然リードを引っ張られた。
noa/ノア
DONE[FengQing] 現代で同棲しているフォンチンAUです(神官ではなく一般人です)。ある日、突然姿を消した慕情。
※全年齢、ネタバレなし
いなくなった慕情 家の中が、やけに静かだ。
日曜の朝、目を覚ました風信はむくりと体を起こした。
隣に慕情がいないのは珍しくない。たいてい彼のほうが早起きだ。だが、耳をすませても、何の物音もせず、人の気配が感じられない。
風信はジーンズを履きながら、寝室から顔を出した。やはり、しんと静まり返っている。
まあ、買い物かなにかに出かけているのだろう。特に気に留めず、風信は冷蔵庫から出した牛乳を口に流し込んだ。
だが、昼を過ぎて、夕方になり、陽が沈んでも慕情は帰ってこなかった。
メッセージを送るが、既読の表示はつかない。
今日は何か予定があっただろうか。部屋にかけてあるカレンダーを見るが、二人ともあまり書き込まないし、冷蔵庫に貼ってあるホワイトボードには、買い足すもののメモが残っているだけだ。
4449日曜の朝、目を覚ました風信はむくりと体を起こした。
隣に慕情がいないのは珍しくない。たいてい彼のほうが早起きだ。だが、耳をすませても、何の物音もせず、人の気配が感じられない。
風信はジーンズを履きながら、寝室から顔を出した。やはり、しんと静まり返っている。
まあ、買い物かなにかに出かけているのだろう。特に気に留めず、風信は冷蔵庫から出した牛乳を口に流し込んだ。
だが、昼を過ぎて、夕方になり、陽が沈んでも慕情は帰ってこなかった。
メッセージを送るが、既読の表示はつかない。
今日は何か予定があっただろうか。部屋にかけてあるカレンダーを見るが、二人ともあまり書き込まないし、冷蔵庫に貼ってあるホワイトボードには、買い足すもののメモが残っているだけだ。
noa/ノア
DOODLE[風信&南風✈] パイロットAU。貧血で倒れて風信さんにお姫様だっこされるなんぽんが書きたかっただけ。※諸々深く考えずにお読みください😂
夕暮れの空を飛ぶコックピットに、エンジンの規則的な唸りとは違う音が響く。
南風が、はっとして腕で腹を抱える。「……すみません」
風信は小さく笑い、横目で見た。「腹へってるのか?」
「はい。その、ちょっと節制しておこうかと」
ああ、と風信は察する。
もうすぐやってくる航空身体検査。それはパイロットの健康診断だが、結果いかんによっては飛べなくなることもありうる。もちろん永遠に飛べなくなるような重篤なことは滅多にないとはいえ、ひっかからないに越したことはない。
「前回、数値がちょっと悪くなってたので……今回は食事もしばらくサラダだけにしたりして頑張ってるんですけど……」
「ハードな仕事なんだから、しっかり食べないともたないぞ」と風信は眉をひそめるが、向こうも大人だ。食生活に口を出すこともあるまい、とそれ以上は何も言わなかった。
2137南風が、はっとして腕で腹を抱える。「……すみません」
風信は小さく笑い、横目で見た。「腹へってるのか?」
「はい。その、ちょっと節制しておこうかと」
ああ、と風信は察する。
もうすぐやってくる航空身体検査。それはパイロットの健康診断だが、結果いかんによっては飛べなくなることもありうる。もちろん永遠に飛べなくなるような重篤なことは滅多にないとはいえ、ひっかからないに越したことはない。
「前回、数値がちょっと悪くなってたので……今回は食事もしばらくサラダだけにしたりして頑張ってるんですけど……」
「ハードな仕事なんだから、しっかり食べないともたないぞ」と風信は眉をひそめるが、向こうも大人だ。食生活に口を出すこともあるまい、とそれ以上は何も言わなかった。
noa/ノア
DOODLE[風信&南風✈] ひっそり泣いてる南風に静かに寄り添う風信さんが書きたかっただけのらくがき さてどうしたものか。
風信は壁に背をもたせかけ、腕を組んで目の前の虚空を見つめる。足元からは、抑えきれないすすり泣きの声。
懐中電灯の電池が切れたので備品室に取りに来ただけだった。気配を感じて部屋の奥を覗き込んだ風信の目に入ったのは、床にうずくまった人影。小さく揺れる肩と、見慣れた髪。
備品室になんて滅多に来ないのに、来た時に限って何故、と思ったことは否めない。だから気配に気づいて頭を上げ、涙に濡れた顔で「なんで……」と呟く南風と目があったとき、風信のほうも同じ気持ちだった。
そのまま見なかったふりをして立ち去ればよかったのだろう。でも風信にはそれが出来なかった。ゆっくり近づいていっても南風は立ち上がることはなく、うずくまったまま、また腕に顔をうずめる。
1130風信は壁に背をもたせかけ、腕を組んで目の前の虚空を見つめる。足元からは、抑えきれないすすり泣きの声。
懐中電灯の電池が切れたので備品室に取りに来ただけだった。気配を感じて部屋の奥を覗き込んだ風信の目に入ったのは、床にうずくまった人影。小さく揺れる肩と、見慣れた髪。
備品室になんて滅多に来ないのに、来た時に限って何故、と思ったことは否めない。だから気配に気づいて頭を上げ、涙に濡れた顔で「なんで……」と呟く南風と目があったとき、風信のほうも同じ気持ちだった。
そのまま見なかったふりをして立ち去ればよかったのだろう。でも風信にはそれが出来なかった。ゆっくり近づいていっても南風は立ち上がることはなく、うずくまったまま、また腕に顔をうずめる。
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DOODLE[風信&南風✈] パイロットAU。長距離往復フライトの次の日、ふたり一緒にインフルにやられる二人。高熱の風信機長にビデオ通話する南風がいます。高熱でフラフラの風信さんがやたら色っぽいということを書きたかっただけです。
※全年齢です
熱のいたずら「南風、大丈夫か?」
十時間をこえる長距離往復フライトは、慣れていても堪える。だが、フライト後、一緒に乗務していた南風の顔に疲労以外のものを感じ、風信は尋ねた。南風は、気づかれたことに驚いたように顔をあげる。
「大丈夫です。でもちょっとだけ……頭がいたくて」
にこっと笑って見せる南風の額にすっと手を伸ばす。
「熱はなさそうだな。でも体調が悪くなるようだったら医者にいけよ」
「はい」南風は答える。「機長の手、冷たくて気持ちいい……」
そのトロリとした顔に若干心配になるが、南風のことだ、無理はしないだろうとそれほど気にとめず帰宅した。
次の日の朝、風信は嫌な予感とともに目を覚ました。
枕の上で動かした頭がずきりと鈍く痛む。恐る恐る額に手をもっていく。
2791十時間をこえる長距離往復フライトは、慣れていても堪える。だが、フライト後、一緒に乗務していた南風の顔に疲労以外のものを感じ、風信は尋ねた。南風は、気づかれたことに驚いたように顔をあげる。
「大丈夫です。でもちょっとだけ……頭がいたくて」
にこっと笑って見せる南風の額にすっと手を伸ばす。
「熱はなさそうだな。でも体調が悪くなるようだったら医者にいけよ」
「はい」南風は答える。「機長の手、冷たくて気持ちいい……」
そのトロリとした顔に若干心配になるが、南風のことだ、無理はしないだろうとそれほど気にとめず帰宅した。
次の日の朝、風信は嫌な予感とともに目を覚ました。
枕の上で動かした頭がずきりと鈍く痛む。恐る恐る額に手をもっていく。
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DONE新春SSおみくじ:第八番 [風信&慕情]現代の日本で年越しを迎えるふたり。謎設定。深く考えずにお読みください。
冬の冷たい空気に冷えた指先をこめかみに当て、この何百年繰り返し唱えた口令を唱える。
なんど年を超しても、同じことをやっている自分が可笑しい。
『なんだ、風信。私は下界で任務中なんだが』
そして、なんど年を越しても変わらない不機嫌な声が返ってくる。
「なんだかお前の声がききたくなった、と言ったら怒るか、慕情」
沈黙が返ってくるが、通霊は切れてはいない。
「最近信徒が増えてきた東の異国に来ているのだが、この国は年越しだというのに花火の一つもあがらない」
通霊の向こうで、はん、と鼻を鳴らす音がする。
『お前は本当に、花火だの爆竹だの賑やかしいのが好きだな』
「だって、年越しにはやはり目出度く賑やかにいきたいだろ? なのに、さっきから静まりかえっていて、なにやら陰気な鐘の音が何度も——」
1796なんど年を超しても、同じことをやっている自分が可笑しい。
『なんだ、風信。私は下界で任務中なんだが』
そして、なんど年を越しても変わらない不機嫌な声が返ってくる。
「なんだかお前の声がききたくなった、と言ったら怒るか、慕情」
沈黙が返ってくるが、通霊は切れてはいない。
「最近信徒が増えてきた東の異国に来ているのだが、この国は年越しだというのに花火の一つもあがらない」
通霊の向こうで、はん、と鼻を鳴らす音がする。
『お前は本当に、花火だの爆竹だの賑やかしいのが好きだな』
「だって、年越しにはやはり目出度く賑やかにいきたいだろ? なのに、さっきから静まりかえっていて、なにやら陰気な鐘の音が何度も——」
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DONE新春SSおみくじ:第七番 [殿下&南風&扶揺]原作軸の神官三人ですが、舞台は現代。謎時空。何も考えずにお読みください。
謝憐がATMで無茶をするお話。
「あ、君たちか」
菩薺観の扉を開けた謝憐は、険しい顔で佇む若い神官二人に微笑みかけた。
「呼んでおいて、君たちか、はないでしょう」
一人がぐるりと白眼をむく。
「扶揺、べつに呼んではいないんだが」
「通霊で『君たちの助けが必要で……あ、いやまあいい。一人でなんとかする』なんて言って切られたら、来ないわけにはいかないじゃないですか!」
もう一人が腕組みをして大きな声で言うと、謝憐は肩をすくめた。
「いやぁ、南風、言っている途中でなんとかなるかと思ったんだよ。でも、まあ来てくれた以上、手伝ってくれるかな?」と言うと、二人はふんとそっぽを向き、
「よろこんで!」と噛みつくように言った。
謝憐は苦笑いしながら二人を中に招き入れ、奥に置かれた功徳箱の前に立った。
1843菩薺観の扉を開けた謝憐は、険しい顔で佇む若い神官二人に微笑みかけた。
「呼んでおいて、君たちか、はないでしょう」
一人がぐるりと白眼をむく。
「扶揺、べつに呼んではいないんだが」
「通霊で『君たちの助けが必要で……あ、いやまあいい。一人でなんとかする』なんて言って切られたら、来ないわけにはいかないじゃないですか!」
もう一人が腕組みをして大きな声で言うと、謝憐は肩をすくめた。
「いやぁ、南風、言っている途中でなんとかなるかと思ったんだよ。でも、まあ来てくれた以上、手伝ってくれるかな?」と言うと、二人はふんとそっぽを向き、
「よろこんで!」と噛みつくように言った。
謝憐は苦笑いしながら二人を中に招き入れ、奥に置かれた功徳箱の前に立った。
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DONE新春SSおみくじ:第六番 [風信&南風 パイロットAU]※南風はでてきません
認識のすれ違いにより、風信機長と組むモブ副操縦士君が勘違いをするお話。
「おはよう」
ブリーフィング室で後ろからかけられた声に、若い副操縦士が振り返る。
「おはようございます。風信機長ですか」
「ああ。NY2501便はここだな?」
「はい、はじめまして」
社内で名高い風信機長だが、その副操縦士はまだ一緒に飛んだことはなかった。二人で確認を始める。
風信も、話しながらこの初めて組む副操縦士の様子をみていた。少しばかり早とちりしがちなところはありそうだが、判断は早そうだ。ちらちらと自分の顔を伺ってくる様子に少し引っかからないでもないが、機長の反応が気になるのは仕方ないだろうとそれほど気にはとめなかった。
一通り確認を終えたところで、風信は指を軽く弄び、左手から指輪をはずした。だが外したところでそれは風信の指からぽろりと落ちた。
1302ブリーフィング室で後ろからかけられた声に、若い副操縦士が振り返る。
「おはようございます。風信機長ですか」
「ああ。NY2501便はここだな?」
「はい、はじめまして」
社内で名高い風信機長だが、その副操縦士はまだ一緒に飛んだことはなかった。二人で確認を始める。
風信も、話しながらこの初めて組む副操縦士の様子をみていた。少しばかり早とちりしがちなところはありそうだが、判断は早そうだ。ちらちらと自分の顔を伺ってくる様子に少し引っかからないでもないが、機長の反応が気になるのは仕方ないだろうとそれほど気にはとめなかった。
一通り確認を終えたところで、風信は指を軽く弄び、左手から指輪をはずした。だが外したところでそれは風信の指からぽろりと落ちた。
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DONE新春SSおみくじ:第五番 [風信&南風]東の異国から、風信将軍が持って帰ってきたお土産のお菓子を楽しむ二人。
下界で任務を終えて戻った将軍が、何か持ち帰ってくることは珍しくない。
それは時に、適切に処理が必要な妖気を帯びた品であったり、皆で知恵を合わせて正体を調べなければならない重大なもののこともあれば、神官たちの役に立つであろう些細な物のこともある。
その日、南陽将軍が持ち帰ってきたのは、菓子だった。
いち早く将軍の戻りに駆け付けた南風に、風信は小さな箱を手渡した。
「今回の任務はたしか、海を越えた東の地でしたよね」
「ああ。どうやらその地で年明けによく食べる菓子らしい」
南風はおずおずと箱を開けた。
「おお……」
中には、半円の形をした白く柔らかそうな菓子が並んでいた。
「綺麗ですね」
「そうだろう? 名は確か……花……花びら餅と呼ばれていたかな」
1143それは時に、適切に処理が必要な妖気を帯びた品であったり、皆で知恵を合わせて正体を調べなければならない重大なもののこともあれば、神官たちの役に立つであろう些細な物のこともある。
その日、南陽将軍が持ち帰ってきたのは、菓子だった。
いち早く将軍の戻りに駆け付けた南風に、風信は小さな箱を手渡した。
「今回の任務はたしか、海を越えた東の地でしたよね」
「ああ。どうやらその地で年明けによく食べる菓子らしい」
南風はおずおずと箱を開けた。
「おお……」
中には、半円の形をした白く柔らかそうな菓子が並んでいた。
「綺麗ですね」
「そうだろう? 名は確か……花……花びら餅と呼ばれていたかな」
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DONE新春SSおみくじ:第四番 [風信&南風 パイロットAU]年越しのNYの中継を見ていた風信機長が、画面に見慣れた姿を見つけるお話。
「ん?」
会社の休憩室で、テレビで流れるニュースをぼんやりと見ていた風信は、思わずその画面を凝視した。
テレビには新しい年を待つ世界各地の様子が流れている。画面にいま映っているのは、ニューヨークはタイムズスクエア。年越しの有名なカウントダウンには、毎年大勢の人が集まる。
まだ早いはずだが、もうすでにカウントダウン待ちの人々が集まっているらしい。だが、それはどうでもよかった。風信の目を引いたのは、キャスターの後ろに映っている人物だ。
ダウンジャケットに身を包み、寒そうにしながらきょろきょろと周りを見ているその姿には、ひどく見覚えがあった。
「南風……?」
間違いない。自分でもよく気づいたものだなと思いながら風信はおもわず画面の中の姿を見つめた。
1075会社の休憩室で、テレビで流れるニュースをぼんやりと見ていた風信は、思わずその画面を凝視した。
テレビには新しい年を待つ世界各地の様子が流れている。画面にいま映っているのは、ニューヨークはタイムズスクエア。年越しの有名なカウントダウンには、毎年大勢の人が集まる。
まだ早いはずだが、もうすでにカウントダウン待ちの人々が集まっているらしい。だが、それはどうでもよかった。風信の目を引いたのは、キャスターの後ろに映っている人物だ。
ダウンジャケットに身を包み、寒そうにしながらきょろきょろと周りを見ているその姿には、ひどく見覚えがあった。
「南風……?」
間違いない。自分でもよく気づいたものだなと思いながら風信はおもわず画面の中の姿を見つめた。
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DONE新春SSおみくじ:第参番 [風信&南風]下界から戻ってきた風信将軍を手伝う南風。南風吸いをする風信将軍もいます。
部屋で剣の手入れをしていた南風は、手をとめて顔をあげた。
南陽将軍のお戻りだ。
仙京に将軍が戻ってくると、わずかな気の揺れが起きる。もちろん、下界に降りた時のような派手な衝撃には限りなく及ばない。だが、どんなに僅かでも、南風はそれを逃したことはなかった。
将軍の部屋へ向かう。戸を叩くとくぐもった返事が聞こえた。扉を静かに開け、拱手して頭を下げる。
「失礼いたします」
将軍は、壁に腰を預け、項垂れるように手で頭を支えていた。南風の声に顔を上げる。
「ああ、南風か」
その目は疲れ落ちくぼんでいた。
「新年早々、お疲れさまでした。大変でしたか」
南風の心配そうな声に、いやと小さく首を振る。だが、続いた溜息は深い。
1381南陽将軍のお戻りだ。
仙京に将軍が戻ってくると、わずかな気の揺れが起きる。もちろん、下界に降りた時のような派手な衝撃には限りなく及ばない。だが、どんなに僅かでも、南風はそれを逃したことはなかった。
将軍の部屋へ向かう。戸を叩くとくぐもった返事が聞こえた。扉を静かに開け、拱手して頭を下げる。
「失礼いたします」
将軍は、壁に腰を預け、項垂れるように手で頭を支えていた。南風の声に顔を上げる。
「ああ、南風か」
その目は疲れ落ちくぼんでいた。
「新年早々、お疲れさまでした。大変でしたか」
南風の心配そうな声に、いやと小さく首を振る。だが、続いた溜息は深い。
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DONE新春SSおみくじ:第弐番 [風信&南風 パイロットAU]南風のサングラスが壊れるお話。
「あ、」
コックピットで機材の最終チェックを終え、出発を待っていた風信は、その声に隣を見た。
副操縦士の南風が、手に持ったサングラスをいじっている。
「どうした」と覗き込む。その手の中のサングラスは片方のつるが外れていた。
「壊れたのか?」風信が聞くと、南風は気まずそうな顔をした。
「その、昨日うっかり踏んでしまって……。でも、つるが外れただけだったので、テープで巻いてみたら直ったかと思ったんですが」
目を近づけて、うーんと唸る。「やっぱりダメだったのかも」
「予備は」風信が聞くと南風は、そのぅ、と言葉を濁す。「……ロッカーに」
「おい」
風信の顔を見て、南風の表情がわずかに固まる。
「お前、これはカッコつけるための小道具じゃなくて、上空では必需品だぞ」
1012コックピットで機材の最終チェックを終え、出発を待っていた風信は、その声に隣を見た。
副操縦士の南風が、手に持ったサングラスをいじっている。
「どうした」と覗き込む。その手の中のサングラスは片方のつるが外れていた。
「壊れたのか?」風信が聞くと、南風は気まずそうな顔をした。
「その、昨日うっかり踏んでしまって……。でも、つるが外れただけだったので、テープで巻いてみたら直ったかと思ったんですが」
目を近づけて、うーんと唸る。「やっぱりダメだったのかも」
「予備は」風信が聞くと南風は、そのぅ、と言葉を濁す。「……ロッカーに」
「おい」
風信の顔を見て、南風の表情がわずかに固まる。
「お前、これはカッコつけるための小道具じゃなくて、上空では必需品だぞ」
noa/ノア
DONE新春SSおみくじ:第壱番 [風信&慕情 現代AU]現代に暮らす風信と慕情。慕情が柚子ジャムをつくるお話。
年明けの休日の朝、目覚めた風信はひくひくと鼻を動かした。
ベッドから出てキッチンへ行くと、長い髪を束ねた姿がガス台に向かっていた。
「おはよう、慕情」
あくびをしながら声をかける。
「ん」
振り向くことなく返ってくる声はいつもどおりだ。
「なに作ってるんだ?」風信は後ろから覗き込んだ。
慕情は鍋の中身をヘラでゆっくりかき混ぜている。立ち昇る湯気はふわりと甘酸っぱい。
「謝憐からユズが大量に送り付けられてきた」
「ユズ?」
「ああ。なんか庭でいっぱいできたらしい」
「へえ」
「で、あまりたくさんあるから、ジャムにでもしておこうかと」
「なるほど」
鍋の中の深い黄色。その表面では、ふつふつと泡が現れては消える。
ヘラを持ち上げ、黄金色がポタリとゆっくり垂れるのを確認し、慕情が火を消す。風信はそれを見て、横に立ててあるスプーンをさっと取った。だが鍋の上に持って行ったところで、その手首をがしりと掴まれた。
1315ベッドから出てキッチンへ行くと、長い髪を束ねた姿がガス台に向かっていた。
「おはよう、慕情」
あくびをしながら声をかける。
「ん」
振り向くことなく返ってくる声はいつもどおりだ。
「なに作ってるんだ?」風信は後ろから覗き込んだ。
慕情は鍋の中身をヘラでゆっくりかき混ぜている。立ち昇る湯気はふわりと甘酸っぱい。
「謝憐からユズが大量に送り付けられてきた」
「ユズ?」
「ああ。なんか庭でいっぱいできたらしい」
「へえ」
「で、あまりたくさんあるから、ジャムにでもしておこうかと」
「なるほど」
鍋の中の深い黄色。その表面では、ふつふつと泡が現れては消える。
ヘラを持ち上げ、黄金色がポタリとゆっくり垂れるのを確認し、慕情が火を消す。風信はそれを見て、横に立ててあるスプーンをさっと取った。だが鍋の上に持って行ったところで、その手首をがしりと掴まれた。
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DONE[風信&南風✈] 風南パイロットAU。どうみても普通じゃない二人の関係に気づきだす社員たち。当の本人たちは気づいてません。
ただならぬ二人 あの二人は絶対におかしい。
南陽航空の少なからぬ社員たちの間で、その認識は共有されていた。
業界でも指折りの中堅パイロット、風信機長。
会社の有望株と名高い、南風副操縦士。
きら星のような二人は、その輝きだけで注目を集めていたのかといえば、それは少し違ったかもしれない。
「南風、どうした」
機へ向かう前にパイロットたちがフライトの確認を行うブリーフィング室。一足先にパソコン画面で雲の様子を確認していた南風が俯いているのを見て、やってきた風信が声をかける。
南風が顔を上げる。その片目は赤く涙でぬれていた。
「あ、風信機長! いえ、さっき外を確認したときに風が強くて、ちょっと目に何か入ってしまって」
南風が目にもっていこうとした手を、風信が掴む。
2523南陽航空の少なからぬ社員たちの間で、その認識は共有されていた。
業界でも指折りの中堅パイロット、風信機長。
会社の有望株と名高い、南風副操縦士。
きら星のような二人は、その輝きだけで注目を集めていたのかといえば、それは少し違ったかもしれない。
「南風、どうした」
機へ向かう前にパイロットたちがフライトの確認を行うブリーフィング室。一足先にパソコン画面で雲の様子を確認していた南風が俯いているのを見て、やってきた風信が声をかける。
南風が顔を上げる。その片目は赤く涙でぬれていた。
「あ、風信機長! いえ、さっき外を確認したときに風が強くて、ちょっと目に何か入ってしまって」
南風が目にもっていこうとした手を、風信が掴む。
noa/ノア
DONE[風信&南風✈️] パイロットAU。風信機長とのクリスマスフライトが叶わず、一人、家で寂しく過ごしている南風だったが……?きよしこのよる はあ……
南風は自室のベッドにごろりと転がり、今日何度目かの大きな溜息をついた。
なんてつまらないクリスマスなんだ。
ちらりと時計を見る。味気ないクリスマスの日ももう終わろうとしている。
「クリスマスにオフなんて、彼女とデートでもすればいいじゃないか」そう言って小突いてきた年配の機長には苦笑いで返すしかなかったが、本当は言い返したかった。
彼女なんていませんよ。女性に興味ないですし。なんで若いっていうだけで、クリスマスには誰かとデートっていう発想になるんですか?
もちろん、そんなこと一文字だって言えないのだが。
自分がクリスマスを誰かと一緒に過ごすなら—。
その人は、いま、まさにクリスマス本場の国にいる。
3354南風は自室のベッドにごろりと転がり、今日何度目かの大きな溜息をついた。
なんてつまらないクリスマスなんだ。
ちらりと時計を見る。味気ないクリスマスの日ももう終わろうとしている。
「クリスマスにオフなんて、彼女とデートでもすればいいじゃないか」そう言って小突いてきた年配の機長には苦笑いで返すしかなかったが、本当は言い返したかった。
彼女なんていませんよ。女性に興味ないですし。なんで若いっていうだけで、クリスマスには誰かとデートっていう発想になるんですか?
もちろん、そんなこと一文字だって言えないのだが。
自分がクリスマスを誰かと一緒に過ごすなら—。
その人は、いま、まさにクリスマス本場の国にいる。
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DONE[風南✈] アンソロ寄稿作品。パイロットAU。二人のただならぬ場面(※誤解)を目撃してしまう、南陽航空の若いモブパイロット君がいます。
南風受のつもりですが、なってなかったらすみません。。
⚠️健全ですが、一応大人の方を想定しています。
※アンソロ限定公開期間終了の2025年2月1日よりパスワードなしで公開しています※
若きパイロットの困惑 空港内にある南陽航空の社内エリア。パイロットたちが行き交う廊下も、時間帯によっては人が少ない。しんと静かな無機質な廊下に、二人の人影が佇んでいた。
「南風、どうしてなんだ」
「別に……やっぱりやめようと思っただけです」
南風は下を向いて、とん、と背を廊下の壁に預けた。いつになく拗ねた表情の南風に、前に立つ風信は、腕を組んだまま首を傾げる。
「だが、あんなにやる気だっただろう? 受けてみればいいじゃないか」
「簡単に言わないでください、機長。やっぱりあの試験は俺にはまだ早いです」
南風は俯いたまま溜息をつく。「自信がないだけです。どうぞ、笑ってください」
失礼します、と言って去ろうとした南風は、その途端、頭の横に衝撃を感じて固まった。
3200「南風、どうしてなんだ」
「別に……やっぱりやめようと思っただけです」
南風は下を向いて、とん、と背を廊下の壁に預けた。いつになく拗ねた表情の南風に、前に立つ風信は、腕を組んだまま首を傾げる。
「だが、あんなにやる気だっただろう? 受けてみればいいじゃないか」
「簡単に言わないでください、機長。やっぱりあの試験は俺にはまだ早いです」
南風は俯いたまま溜息をつく。「自信がないだけです。どうぞ、笑ってください」
失礼します、と言って去ろうとした南風は、その途端、頭の横に衝撃を感じて固まった。
noa/ノア
DONE[南風&扶揺✈️] ある日の南扶ちゃんたち。扶揺に呼び出された南風が渡されたモノとは…?
『今週水曜までで会える日は?』
画面に表示されたメッセージの通知。送り主の名前を見なくても誰からかわかる。南風は、小さく溜息をつきながらスマホを手に取り、『ない』と短く返す。厳密にいえばないわけでもないが、そう返すのは癪だった。今日はもう月曜日。いつもながら、こちらの予定などお構いなしだ。こっちだって忙しく飛び回るパイロットなのだ。
すぐに返事が返ってくる。
『木曜は?』
なにやら随分急ぎらしい。手元のカップが空になっていることに気づき、新しくコーヒーを淹れてきてから、ゆっくりと返す。『朝八時。そのあとフライトだから』
向こうでメッセージを打っているらしく、しばらく画面にドットが跳ねる。
『九時。お前のフライト午後からだろ? すぐ済む。じゃあいつもの空港のカフェで』
2349画面に表示されたメッセージの通知。送り主の名前を見なくても誰からかわかる。南風は、小さく溜息をつきながらスマホを手に取り、『ない』と短く返す。厳密にいえばないわけでもないが、そう返すのは癪だった。今日はもう月曜日。いつもながら、こちらの予定などお構いなしだ。こっちだって忙しく飛び回るパイロットなのだ。
すぐに返事が返ってくる。
『木曜は?』
なにやら随分急ぎらしい。手元のカップが空になっていることに気づき、新しくコーヒーを淹れてきてから、ゆっくりと返す。『朝八時。そのあとフライトだから』
向こうでメッセージを打っているらしく、しばらく画面にドットが跳ねる。
『九時。お前のフライト午後からだろ? すぐ済む。じゃあいつもの空港のカフェで』
noa/ノア
DONE[風信&南風✈] 忘年会で酔っぱらった事故💋風南つづき。泥酔して寝落ちた南風の面倒をみながら、いろいろ考えてしまう風信さんがいます。(健全)
いったいどうすればいいんだ。
ホテルを出たところで風信は深いため息をついた。その肩には、可愛いコーパイの重みがずっしりと乗っている。
完全にもらい事故という状況に巻き込まれた風信をよそに、事故を起こした本人は、酔いがまわって気持ちよく寝落ちた。なんとか完全に寝てしまってはいないらしく、お開きになって会場を後にする時には、風信が肩を貸せば一応自分の足で歩いてはくれたが、一人で電車で帰るのは到底無理だろう。タクシーに突っ込もうかと思ったが、ホテル前のタクシーの列は長く、上司の面々が済むまでにまだ随分かかりそうだった。
まあそれでも待つほかないか、と歩き出したところで、肩から声がした。「きちょう……」
4585ホテルを出たところで風信は深いため息をついた。その肩には、可愛いコーパイの重みがずっしりと乗っている。
完全にもらい事故という状況に巻き込まれた風信をよそに、事故を起こした本人は、酔いがまわって気持ちよく寝落ちた。なんとか完全に寝てしまってはいないらしく、お開きになって会場を後にする時には、風信が肩を貸せば一応自分の足で歩いてはくれたが、一人で電車で帰るのは到底無理だろう。タクシーに突っ込もうかと思ったが、ホテル前のタクシーの列は長く、上司の面々が済むまでにまだ随分かかりそうだった。
まあそれでも待つほかないか、と歩き出したところで、肩から声がした。「きちょう……」
noa/ノア
DONE[風信&南風✈] 南陽航空の忘年会で酔っぱらって事故る南風💋めずらしく酔っぱらってふにゃふにゃの風信さん大好き南風がいます。
広い店内に、熱気と笑い声が満ち溢れている。
南陽航空の系列ホテルのバーを貸切っての忘年会。毎年代わり映えしないのだが、仕事以外でめったに集まることのない、パイロットに客室乗務員から地上クルーまでが集まるこの機会は大いに盛り上がる。
いつもは緊張を強いられる毎日。だが切り替え上手な者ばかりな分、羽目を外す時にはしっかり外すのがお決まりだ。
「南風、お前やってみろよ」
テーブルを囲むソファ席では、若手のパイロット達がはしゃいでいる。その真ん中ですでに頬を赤く染めている南風が、グラスをテーブルに置き、一つ咳払いをすると、もったいぶった様子で操縦桿を握る真似をすると、ぐっと眉間に皺を寄せる。
「南陽エアー099、スタンバイ・フォー・テイクオフ。……クソっ、玄真航空さっさとどけ!」
2958南陽航空の系列ホテルのバーを貸切っての忘年会。毎年代わり映えしないのだが、仕事以外でめったに集まることのない、パイロットに客室乗務員から地上クルーまでが集まるこの機会は大いに盛り上がる。
いつもは緊張を強いられる毎日。だが切り替え上手な者ばかりな分、羽目を外す時にはしっかり外すのがお決まりだ。
「南風、お前やってみろよ」
テーブルを囲むソファ席では、若手のパイロット達がはしゃいでいる。その真ん中ですでに頬を赤く染めている南風が、グラスをテーブルに置き、一つ咳払いをすると、もったいぶった様子で操縦桿を握る真似をすると、ぐっと眉間に皺を寄せる。
「南陽エアー099、スタンバイ・フォー・テイクオフ。……クソっ、玄真航空さっさとどけ!」