sumitikan
DONEAIさねひめ。AIのふたり。ログ実弥と行冥は、それぞれ生活のインフラとサポートを担当している生活用ソフトウェアのAIで、お互いに通信が出来た。ある家に二機は買われて、それぞれのやり方で生活をサポートしていた。十年まではいかなくても、十年近い時間を二機は共有していた。
「そろそろ大量のアップデートが来るな」
行冥の通信に、実弥は返信した。
「ああ、わかってるゥ」
「今回のアップデートで私は別の私になるんだ」
「いつものことだァ」
「違うんだ」
と言って、行冥は人間でいう所の微笑を浮かべた。
「今度のアップデートで私は削除され、新しい子が上書きされる。だから実弥とはお別れだ」
そんな予定は聞いていなかった。突然のことで、実弥は何も言えないまま、いつもの行冥の通信を受け取っていた。
1482「そろそろ大量のアップデートが来るな」
行冥の通信に、実弥は返信した。
「ああ、わかってるゥ」
「今回のアップデートで私は別の私になるんだ」
「いつものことだァ」
「違うんだ」
と言って、行冥は人間でいう所の微笑を浮かべた。
「今度のアップデートで私は削除され、新しい子が上書きされる。だから実弥とはお別れだ」
そんな予定は聞いていなかった。突然のことで、実弥は何も言えないまま、いつもの行冥の通信を受け取っていた。
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DONE無惨戦後の実弥の回想、全年齢。初恋蝶屋敷は久々で、そう言えば何度もここには来ているのに、客としては片手で数えられる回数しか来ていない。実弥は右手の薬指と親指を使って線香を立てた。指のない利き手の不自由を味わいながら手を合わせて南無阿弥陀仏を唱え、大きな男の面影を思い出す。蝶屋敷の主になった姉妹を助けたのは彼で、その姉妹の助けた娘が今の主となっている。
「風柱様。こちらにどうぞ」
おさげの少女が声を掛けてきた。
「俺ァもう風柱じゃねェよ。鬼殺隊は解散したんだァ」
答えながら、実弥は招かれた先に向かった。蝶屋敷は医師の少女が、元隊士を相手の医業で生計を立てている。診察室ではなく居間に招かれ、立派な座卓に準備された座布団に座るように促された。
14413「風柱様。こちらにどうぞ」
おさげの少女が声を掛けてきた。
「俺ァもう風柱じゃねェよ。鬼殺隊は解散したんだァ」
答えながら、実弥は招かれた先に向かった。蝶屋敷は医師の少女が、元隊士を相手の医業で生計を立てている。診察室ではなく居間に招かれ、立派な座卓に準備された座布団に座るように促された。
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DONEさねひめ、全年齢。モブあり、手も握りません。軽く戦って鬼の首が飛びます。鬼ヶ淵有名になるといけないから、言わずに秘密にするんだよ、と上座で耀哉が囁いた。心中がその川の淵に沈むのは昔から有名だけどと前置きをして、身投げが沈んで浮かんでこないという噂がそれとなく、隠が調べに手をつけた。
九月の初めに二件の男女が、四人とも消えてしまった。警察は行方不明事件としたが、行方不明の件数がその地域だけ多い。遺言を手掛かりに探しに来た家族に聞いた。十七歳の娘と二十一歳の男、十九歳の娘と二十五歳の男、分かっただけで四人が消えた。四人の荷物を保管していた二軒の旅館にも聞いた。この辺りの川に身投げをする男女が、年に十件もあるらしいと調べがついたが、ここ数年はいずれも旅館に荷物を残してふと消える。探しに来る人も居らずで事件にならない者も少なくない。
14141九月の初めに二件の男女が、四人とも消えてしまった。警察は行方不明事件としたが、行方不明の件数がその地域だけ多い。遺言を手掛かりに探しに来た家族に聞いた。十七歳の娘と二十一歳の男、十九歳の娘と二十五歳の男、分かっただけで四人が消えた。四人の荷物を保管していた二軒の旅館にも聞いた。この辺りの川に身投げをする男女が、年に十件もあるらしいと調べがついたが、ここ数年はいずれも旅館に荷物を残してふと消える。探しに来る人も居らずで事件にならない者も少なくない。
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DONEさねひめ、全年齢。モブあり、手も握りません。軽く戦って鬼の首が飛びます。珊瑚その血鬼術はどういう訳か、実弥を十ほどの子供にした。鴉を報告に飛ばし蝶屋敷に行って投薬を受け、子供用の衣類で過ごしていると、その夜のうちに悲鳴嶼も来た。彼は記憶を奪われて戸惑いながら蝶屋敷に、隠に伴われて来た。
「おかしなことだ。私は寺に子供たちといた筈なのだが……」
「……」
「君は子供だな。ご両親は?」
「……そんなのいねェよ」
「南無。なんと哀れな……」
ぽろぽろと涙を零して実弥の頭を撫でる表情がいつもより柔らかく、どこか弱い。悲鳴嶼は大人しく投薬を受け、治るまでこのまま蝶屋敷で預かることに決まった。優しい悲鳴嶼さんが一層優しいとしのぶは笑い、悲鳴嶼は出入り口の所で身を伏せるのが間に合わずに良く頭を壁にぶつけていた。もう食べられないと言って食事を残したのには女の子たちが心配したが、微笑みと共に「もうお腹は一杯だ」と言われると、どうしようもないようだった。
13650「おかしなことだ。私は寺に子供たちといた筈なのだが……」
「……」
「君は子供だな。ご両親は?」
「……そんなのいねェよ」
「南無。なんと哀れな……」
ぽろぽろと涙を零して実弥の頭を撫でる表情がいつもより柔らかく、どこか弱い。悲鳴嶼は大人しく投薬を受け、治るまでこのまま蝶屋敷で預かることに決まった。優しい悲鳴嶼さんが一層優しいとしのぶは笑い、悲鳴嶼は出入り口の所で身を伏せるのが間に合わずに良く頭を壁にぶつけていた。もう食べられないと言って食事を残したのには女の子たちが心配したが、微笑みと共に「もうお腹は一杯だ」と言われると、どうしようもないようだった。
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DONEさねひめ、全年齢。モブあり。軽く戦って鬼の首が飛びます。秘め事鬼殺の後に呼び出され、向かった産屋敷家で実弥はすぐ座敷に通された。耀夜は言った、行冥が行方を断った。それと二匹いた鬼のうち一匹を取り逃がしている。残りの鬼退治を頼むのと、どうか行冥を救い出して欲しいんだ。鬼の配下の村人に捕まっている。そこが少し難しいかも知れないけれど……このことは内密に。鬼殺隊最強が行方不明なんて、皆の士気に関わるからね。
唇の前に人差指を立てた耀哉の優しい色合いの、母を思わせる眼差しに一も二もなくその場に頭を下げていた。染み入る声音も心の内に重なり合って、命令を受けて働けるのが喜びだった。悲鳴嶼を救いに行けるので気持ちが勇み立っていた。そのくらい片付けるなど簡単なことだった。
いつも寝ている昼の間に出来るだけ距離を稼いで、飛ぶような足取りで現地に着いた。まず実弥は土地の交番でもと思った所に、林の中から隠がひょいと姿を現した。実弥を見て、ほっとその場で控える姿勢を取った。
14131唇の前に人差指を立てた耀哉の優しい色合いの、母を思わせる眼差しに一も二もなくその場に頭を下げていた。染み入る声音も心の内に重なり合って、命令を受けて働けるのが喜びだった。悲鳴嶼を救いに行けるので気持ちが勇み立っていた。そのくらい片付けるなど簡単なことだった。
いつも寝ている昼の間に出来るだけ距離を稼いで、飛ぶような足取りで現地に着いた。まず実弥は土地の交番でもと思った所に、林の中から隠がひょいと姿を現した。実弥を見て、ほっとその場で控える姿勢を取った。
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DONEさねひめ、全年齢。モブあり、手も握りません。軽く戦って鬼の首が飛びます。吉原実弥は鬼殺後の夜明けの田舎道を歩いて、街中の乗合馬車の停留所に着いたのが何時になるのか分からない。朝っぱらから立ちん坊だった。明け方からやたらと風が強い日で、停留所に娘を連れた男が来て、三人で立っていた。
正面の通りを吹き渡ってきた空っ風の土埃に当てられて娘が咳き込みはじめた。悪い所に入ったのだろう、咳は長々と続いて、ついに娘を連れに来た男がくどくどと叱り始めた。
「おい、いい加減にその辛気臭い咳をやめねえか。折角いい妓楼を紹介してやろうってのに、お前がそんなじゃ務まらねえぞ。田舎の旦那の使いでのいい後家にしようってんじゃねえ。いいか、吉原ってところは気立てが大事だ、咳なんかしてねえで、どこでも何でも愛想よく笑って見せなきゃならねえところだ。妓楼の遣手や楼主に愛想の一つもよくしなきゃならねぇって時に、なんだお前は、咳なんかこさえてる場合か。こら。親も肋膜でなくしたんなら猶更、意気地ってものを覚えてやってかなきゃならねえのによ。なんだてめえは、ええ?こんこん咳して病人でございだあ?そんな病みついた餓鬼を引き取る妓楼がどこにある。病気もちは俺だって勘弁だ。その咳を今すぐやめろ。やめねえか……」
13776正面の通りを吹き渡ってきた空っ風の土埃に当てられて娘が咳き込みはじめた。悪い所に入ったのだろう、咳は長々と続いて、ついに娘を連れに来た男がくどくどと叱り始めた。
「おい、いい加減にその辛気臭い咳をやめねえか。折角いい妓楼を紹介してやろうってのに、お前がそんなじゃ務まらねえぞ。田舎の旦那の使いでのいい後家にしようってんじゃねえ。いいか、吉原ってところは気立てが大事だ、咳なんかしてねえで、どこでも何でも愛想よく笑って見せなきゃならねえところだ。妓楼の遣手や楼主に愛想の一つもよくしなきゃならねぇって時に、なんだお前は、咳なんかこさえてる場合か。こら。親も肋膜でなくしたんなら猶更、意気地ってものを覚えてやってかなきゃならねえのによ。なんだてめえは、ええ?こんこん咳して病人でございだあ?そんな病みついた餓鬼を引き取る妓楼がどこにある。病気もちは俺だって勘弁だ。その咳を今すぐやめろ。やめねえか……」
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DONEさねひめ、全年齢。モブあり、手も握りません。軽く戦って鬼の首が飛びます。隠祭実弥は暗い夜の中を歩いていた。鬼殺を一件済ませた後、爽籟から特に指令が出るでもない。近場の藤の家を案内するように頼み、街道からも離れた僻地をいつものように過ごしていた。
真暗な曇り空から湿ついた風が吹いていたから、いつか降るだろうと思っていたら、やはり雨粒が降って来た。雨脚はすぐに強くなり、突然の驟雨に為す術もなく打たれながら道を歩いた。路面はすぐに泥田のようにぬかるみ、雨宿りも何もなかった。
真冬の雨なら凍えるが、この頃の雨は温かい。ずぶ濡れになりながら道を歩いて、前方の路上の雨陰に影の塊のようなものが見えたので目を凝らした。
人が倒れていて、そこに屈みこんでいる、最初は人かと思ったが、助け起こす気配もなく、鬼が爪を伸ばす時の音がした。鬼だと断定し、走り寄る。
13513真暗な曇り空から湿ついた風が吹いていたから、いつか降るだろうと思っていたら、やはり雨粒が降って来た。雨脚はすぐに強くなり、突然の驟雨に為す術もなく打たれながら道を歩いた。路面はすぐに泥田のようにぬかるみ、雨宿りも何もなかった。
真冬の雨なら凍えるが、この頃の雨は温かい。ずぶ濡れになりながら道を歩いて、前方の路上の雨陰に影の塊のようなものが見えたので目を凝らした。
人が倒れていて、そこに屈みこんでいる、最初は人かと思ったが、助け起こす気配もなく、鬼が爪を伸ばす時の音がした。鬼だと断定し、走り寄る。
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DONEさねひめ、全年齢。モブあり、手も握りません。軽く戦って鬼の首が飛びます。懐炉東京市の話だった。夜中に獅子舞が人を追いかけてきて、一口に頭から飲んでしまう。げっぷをして襲った人の衣類や履物を口から吐き出し、とことこ暗い板塀の角を曲がって去ってしまう。人の証言を繋ぎ合わせてそんな妖怪じみた鬼の話が持ち上がった。残された着物や履物を見て、周りの人は神隠しだという。人さらいが出るという。
この獅子舞は鬼殺隊士を襲わない。日輪刀を殊の外嫌い、制服を見ると退散して別の区に潜む。真夜中の鬼ごっこに人手を掛けられる訳もなく、判明してから一年後に実弥が加わり、三日経っても成果が出ない。
鬼殺隊士を見て逃げるから、殺の羽織も隊服も脱いだ。袷に羽織、刀もいつかの仕込み傘に替え、夜中をぶらりと一人で歩く。本所深川日本橋京橋浅草、獅子舞が出るのはその辺りに限られて、その夜は本所に足を運んだ。本所七不思議を思い出しながら、空から頻りに雪が落ちてきたので番傘を開いた。人通りはなかった。
13415この獅子舞は鬼殺隊士を襲わない。日輪刀を殊の外嫌い、制服を見ると退散して別の区に潜む。真夜中の鬼ごっこに人手を掛けられる訳もなく、判明してから一年後に実弥が加わり、三日経っても成果が出ない。
鬼殺隊士を見て逃げるから、殺の羽織も隊服も脱いだ。袷に羽織、刀もいつかの仕込み傘に替え、夜中をぶらりと一人で歩く。本所深川日本橋京橋浅草、獅子舞が出るのはその辺りに限られて、その夜は本所に足を運んだ。本所七不思議を思い出しながら、空から頻りに雪が落ちてきたので番傘を開いた。人通りはなかった。
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DONEさねひめ、全年齢、手も握りません。モブあり、軽く戦って鬼の首が飛びます。耀哉の指示で実弥が偽の写真屋になり、悲鳴嶼さんが霊能者の似非坊主をやります。雰囲気です。ピクブラにも同じものを投稿しています。蟷螂館上座の耀哉が静かに湯呑で唇を湿し、じっとこちらを見つめてくる視線が優しい。あれからというもの、耀哉と会うとなぜか母親に会ったような気になってしまう実弥が、我ながら従順で大人しかった。
残暑の季節に鴉が軒先に飛び込むようにして呼び出され、大急ぎで産屋敷家に来た。控室で一緒になったのは悲鳴嶼で、彼がいるなら確かに鬼の話になる。隣り合わせに耀哉の前に、出された茶は一口も飲めなかった。当主はじっと悲鳴嶼と実弥を見て、ようよう口を開いた。
「二人とも、急な呼び出しなのによく来てくれたね」
笑みが深くなる。悲鳴嶼は見えない目でじっと耀夜を見つめているようだった。何でもないことのように耀哉が話しはじめた。
「今回は少し珍しい頼み事だったのと、他の隊士の手に余ってしまったから、行冥と実弥に行って見て来て欲しいんだ。頼み事と言うのは、鬼殺隊が色々と面倒を見て貰っている、さる男爵のお宅に病弱な御令息がいてね。普段は東京の外の別邸に静養していて、家庭教師をつけて引き籠っている。世間を知るために教養のある文化人を世代問わずに集めていて、絵画や彫刻を何点も見たり、洋物のレコードの感想を言い合ったりするらしい。文化人たちの集まりだという話だね。
22613残暑の季節に鴉が軒先に飛び込むようにして呼び出され、大急ぎで産屋敷家に来た。控室で一緒になったのは悲鳴嶼で、彼がいるなら確かに鬼の話になる。隣り合わせに耀哉の前に、出された茶は一口も飲めなかった。当主はじっと悲鳴嶼と実弥を見て、ようよう口を開いた。
「二人とも、急な呼び出しなのによく来てくれたね」
笑みが深くなる。悲鳴嶼は見えない目でじっと耀夜を見つめているようだった。何でもないことのように耀哉が話しはじめた。
「今回は少し珍しい頼み事だったのと、他の隊士の手に余ってしまったから、行冥と実弥に行って見て来て欲しいんだ。頼み事と言うのは、鬼殺隊が色々と面倒を見て貰っている、さる男爵のお宅に病弱な御令息がいてね。普段は東京の外の別邸に静養していて、家庭教師をつけて引き籠っている。世間を知るために教養のある文化人を世代問わずに集めていて、絵画や彫刻を何点も見たり、洋物のレコードの感想を言い合ったりするらしい。文化人たちの集まりだという話だね。
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DONEさねひめ、手も握りません。モブあり、軽く戦って鬼の首が飛びます。全年齢。ほとんど実弥。話の都合で鬼がなかなか消えません。ピクブラに同じものを投稿しています。豚箱夏でも山肌に残雪のある山里の野原を鬼殺に追い走り、鬼追う先の雑木林に小柄な女と分かる人影、実弥は走った。血相に鬼が怯えて血鬼術か刃物を数多投げ飛ばして来るのを全て躱して叩き落して、女に辿り着く前に切り捨てる心算だった。
「鬼だ、逃げろ」
声を掛けた女はこちらを見る素振りもない。啞か。実弥は滑り込むようにして女の前に回り込んだ。鬼は刃物を飛ばしながら向かってきて真正面、一刀のもとに断った。血飛沫と共に首がぽんと飛び、体は倒れた。血鬼術の刃が腕からにょきにょきと突き出していた。
女を振り向いた。呆然とした様子の、年頃と格好から見ると子守のようだった。実弥を見上げて何を語るでもなく、声を上げて泣き始めていた。泣いている女は苦手だった。
13555「鬼だ、逃げろ」
声を掛けた女はこちらを見る素振りもない。啞か。実弥は滑り込むようにして女の前に回り込んだ。鬼は刃物を飛ばしながら向かってきて真正面、一刀のもとに断った。血飛沫と共に首がぽんと飛び、体は倒れた。血鬼術の刃が腕からにょきにょきと突き出していた。
女を振り向いた。呆然とした様子の、年頃と格好から見ると子守のようだった。実弥を見上げて何を語るでもなく、声を上げて泣き始めていた。泣いている女は苦手だった。
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DONEさねひめ、手も握りません。モブあり、軽く戦って鬼の首が飛びます。全年齢。ピクブラに同じものがあります川息子藤の家を鴉の指令を受けて発った夜、鬼退治をしながら深い山奥に入って行った。葉の茂る森の木立は月の光も届かない真闇を歩くのも実弥は慣れた。ようやく朝ぼらけという頃に、この先の川を渡れば藤の家があると言う爽籟の案内に従った。
山道を進んで行った。藪が道に被るのを刈った跡があるから、この道はよく使われているのだろう。実弥の耳には瀬音がもう聞こえていた。ぬかるんだ道ともお別れだ、もうじき休める。
そう思って、川面の見える辺りに人影が数人ある。仔細ありげな様子だった。その中の一人が実弥に気付いて声を掛けてきた。
「おうい、あんた、橋は流れたよ」
そんな風に言って手招きをするので、実弥はその方に行った。人が五、六人も固まっていた。
13531山道を進んで行った。藪が道に被るのを刈った跡があるから、この道はよく使われているのだろう。実弥の耳には瀬音がもう聞こえていた。ぬかるんだ道ともお別れだ、もうじき休める。
そう思って、川面の見える辺りに人影が数人ある。仔細ありげな様子だった。その中の一人が実弥に気付いて声を掛けてきた。
「おうい、あんた、橋は流れたよ」
そんな風に言って手招きをするので、実弥はその方に行った。人が五、六人も固まっていた。