かべうちのかべ
DONE東オンリーの展示物。東の話。
ほのぼの。かわいい。が目標。
『東のおだやかな一日』「ファウスト、見ろ」
久々の穏やかな時間、誰もいない談話室でソファに座り、本を読でいた僕に突然声がかかる。ドアを開け放って足音高く近づいてくる人物はそちらを見なくても分かる。聞き慣れた自信満々の力強い声。明日の授業までは特に用事がなかったはずだ。その予想を裏付けるように、後ろからバタバタと駆けてくる人物が「シノ!」と呼んだ。
急に騒がしくなった空気に、小さく溜息を吐きながら諦めたように本を閉じた。ここで相手にしなければ後々が面倒になる。
「マッツァー・スディーパス」
僕の目の前で立ち止まったシノは、説明も何もないまま、よどみなく呪文を唱えた。言い終わると同時に光が集まり、そこには黒くツヤのある毛並みの小さめの猫が現れた。光の入り方によって青みがかって見えるその毛はシノの髪色と同じだ。瞳は燃えるような強い赤。どうだとでも言うかのように、すましてこちらを見上げている。
2670久々の穏やかな時間、誰もいない談話室でソファに座り、本を読でいた僕に突然声がかかる。ドアを開け放って足音高く近づいてくる人物はそちらを見なくても分かる。聞き慣れた自信満々の力強い声。明日の授業までは特に用事がなかったはずだ。その予想を裏付けるように、後ろからバタバタと駆けてくる人物が「シノ!」と呼んだ。
急に騒がしくなった空気に、小さく溜息を吐きながら諦めたように本を閉じた。ここで相手にしなければ後々が面倒になる。
「マッツァー・スディーパス」
僕の目の前で立ち止まったシノは、説明も何もないまま、よどみなく呪文を唱えた。言い終わると同時に光が集まり、そこには黒くツヤのある毛並みの小さめの猫が現れた。光の入り方によって青みがかって見えるその毛はシノの髪色と同じだ。瞳は燃えるような強い赤。どうだとでも言うかのように、すましてこちらを見上げている。