柊 ユヅキ
MAIKINGアナデン/ソフィア→←ジェイド未定3(ほんとうに、素敵な場所……)
さあっと風が吹き抜けた。夜更け前の空気はほのかにひんやりと肌を撫ぜる。ジェイドの長い前髪から普段は隠れている右目が覗いて、引き寄せられるように、ほとんど無意識でソフィアはまなざしを向けていた。なんだ、と言いたそうな彼の流し目に、はっとしてなんでもないと首を振る。
緊張を紛らわせたくて、静かに深呼吸した。鼻から吸って、口からゆっくり吐き出す。スカートをつまんでいた手を下ろすと、拳ひとつ分の距離にふたりの手が並ぶ。指を伸ばせば触れてしまえる距離だった。大きな手。触ってみたい。やましい偶然を何度期待したことか。眼下の雲に落ちる脚の影が、そわそわと落ち着かない動きまで写し込んでいるのが少し恥ずかしい。気づかれていないかとこっそりジェイドを盗み見たが、彼の顔も体もまっすぐに夕日のほうを向いていて、ソフィアの足の影なんて見えてもいないようだった。
725さあっと風が吹き抜けた。夜更け前の空気はほのかにひんやりと肌を撫ぜる。ジェイドの長い前髪から普段は隠れている右目が覗いて、引き寄せられるように、ほとんど無意識でソフィアはまなざしを向けていた。なんだ、と言いたそうな彼の流し目に、はっとしてなんでもないと首を振る。
緊張を紛らわせたくて、静かに深呼吸した。鼻から吸って、口からゆっくり吐き出す。スカートをつまんでいた手を下ろすと、拳ひとつ分の距離にふたりの手が並ぶ。指を伸ばせば触れてしまえる距離だった。大きな手。触ってみたい。やましい偶然を何度期待したことか。眼下の雲に落ちる脚の影が、そわそわと落ち着かない動きまで写し込んでいるのが少し恥ずかしい。気づかれていないかとこっそりジェイドを盗み見たが、彼の顔も体もまっすぐに夕日のほうを向いていて、ソフィアの足の影なんて見えてもいないようだった。