ポン酒
DONE恋愛感情未満の温度感って尊いよね真夏に、真冬の日常を書いたっていいじゃない
四畳半の温度 外はまだ白んだばかりで、四畳半の空気は張りつめるように冷たかった。壁に指先を掛け、上体を浮かせたいつもの姿勢で眠っていた俺は、かすかな水音と菜箸の小気味良い音で目を開けた。
布団という温もり、この身体には不要の代物だ。寒気は容赦なく肌を刺すが、シベリアの冬を鉄格子の中で越えた身には、むしろ心地さえ覚える。
壁から静かに降りると、狭い台所に立つガイアの背中が見えた。鍋の中で湯がこぽこぽと音を立て、すっかり馴染んだ味噌と出汁の香りが鼻をくすぐる。
黒に覆われた背筋は真っ直ぐに伸ばされ、無駄のない所作が静かに続いている。目を逸らそうとしたが、なぜか視線がそこに留まった。
「起きたか」
振り返らずに放たれた声は、いつも通り淡々としている。
2678布団という温もり、この身体には不要の代物だ。寒気は容赦なく肌を刺すが、シベリアの冬を鉄格子の中で越えた身には、むしろ心地さえ覚える。
壁から静かに降りると、狭い台所に立つガイアの背中が見えた。鍋の中で湯がこぽこぽと音を立て、すっかり馴染んだ味噌と出汁の香りが鼻をくすぐる。
黒に覆われた背筋は真っ直ぐに伸ばされ、無駄のない所作が静かに続いている。目を逸らそうとしたが、なぜか視線がそこに留まった。
「起きたか」
振り返らずに放たれた声は、いつも通り淡々としている。