pie_no_m
SPOILER何も考えないでくださいすべてを忘れてください
ハッピーエンド 見慣れた星々を指先で結ぶ。シンの頭上には今夜も、先人たちが読み解いた、壮大で果てしない物語が展開されていた。
シンが息の詰まるような下層の生活を捨て、廃墟とも言えそうなこの隠れ家に転がり込んでそれなりの時が経った。迎え入れてくれたのは、シンと同じく家族を持たず、シンと違って名前すら持たない、黒髪の少年だった。凛々しさを湛えた姿は幼い頃から繰り返し読んでいた絵本に出てくる翼竜そのもので、どうせ持たぬのであればと、シンは少年に竜の名を与えた。
「エアのやつ、おそいなぁ」
その彼の名前を口にして、シンの指先は星を追うのをやめ、力を抜いた腕を横たえた身体の脇におさめた。
「留守番はいいけど、たいくつ。おれをこんなに待たせるなんて……」
2806シンが息の詰まるような下層の生活を捨て、廃墟とも言えそうなこの隠れ家に転がり込んでそれなりの時が経った。迎え入れてくれたのは、シンと同じく家族を持たず、シンと違って名前すら持たない、黒髪の少年だった。凛々しさを湛えた姿は幼い頃から繰り返し読んでいた絵本に出てくる翼竜そのもので、どうせ持たぬのであればと、シンは少年に竜の名を与えた。
「エアのやつ、おそいなぁ」
その彼の名前を口にして、シンの指先は星を追うのをやめ、力を抜いた腕を横たえた身体の脇におさめた。
「留守番はいいけど、たいくつ。おれをこんなに待たせるなんて……」