XKitamaru
DONEだいぶ遅れましたが、老いらくの若イチお誕生祭。【若イチ】幸福問答 誕生日を祝う。
荒川真斗にとって、それは呪いを更新する日であり続けた。
思うように動かない身体で、また三百六十五日もの間引きずって生きて行かねばならない呪いだ。
***
風呂から上がった真斗は、こたつの上に置かれたものを見て凍り付いた。
テレビでは国民的歌手が、真斗が子どもの頃に聴いたような歌を朗らかに歌っている。こたつの上にいそいそと皿やフォークを並べている男が、真斗がやって来た気配に振り向いた。凍り付いている真斗とは対照的な、満面の笑みだ。頭を拭きながら出て来たせいで顔にかかった前髪から、ぽたりと水滴が落ちる。
「あ、若。お帰りなさい」
満面の笑みのまま、意味不明な日本語でいった男は、春日一番だ。還暦を迎えても、その笑みは若々しいというより、少年のようだなといつも思う。
3630荒川真斗にとって、それは呪いを更新する日であり続けた。
思うように動かない身体で、また三百六十五日もの間引きずって生きて行かねばならない呪いだ。
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風呂から上がった真斗は、こたつの上に置かれたものを見て凍り付いた。
テレビでは国民的歌手が、真斗が子どもの頃に聴いたような歌を朗らかに歌っている。こたつの上にいそいそと皿やフォークを並べている男が、真斗がやって来た気配に振り向いた。凍り付いている真斗とは対照的な、満面の笑みだ。頭を拭きながら出て来たせいで顔にかかった前髪から、ぽたりと水滴が落ちる。
「あ、若。お帰りなさい」
満面の笑みのまま、意味不明な日本語でいった男は、春日一番だ。還暦を迎えても、その笑みは若々しいというより、少年のようだなといつも思う。