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    #きど+あさ

    brightness+Wetness

    Ugaki_shuuu

    TRAINING【なんとなく下げてたものを再掲】キド+アサ。特に何を書こうと思ったわけでもなく、ただ情景描写がしたかった。
    なにげに自分の中では一番気に入ってる小説だったりします
    ただキドアサがタバコを吸っている情景描写がしたかっただけある日のことだった。
    その日はなんの変哲もないただの水曜日だった。朝起きて、飯を食い、テレビのニュースのヘッドラインだけ確認して、10時ごろフロント企業の事務所が入っているビルへと足を向けた。
    そこで城戸の兄貴に会い、諸々のことを確認し、一緒に昼飯を食い、午後は兄貴について人に会いに行った。そんなことをしていたら、時刻はすでに夕方の7時だった。切った張ったのドタバタ劇も何もない、本当に平凡で平坦な、あくびのでそうな1日だった。
    この後もせいぜい2、3軒のキャバクラへ守り代を回収に行くくらいしかやることがなかったので、事務所にいた他の連中と一緒に、出前で寿司でも取ろうということになった。寿司桶いっぱいに入った寿司を、その場にいた4、5人の組員たちとともに、わいわい言いながらつつく。そうして腹もくちくなって、食休みに一服しようということで、城戸とともに、ビルの裏手の非常階段のところへとやってきた。重たい鉄の防火扉を開けると、そこには事務所の連中が、空き缶で作った灰皿を針金で窓の鉄格子にくくりつけた、簡易的な喫煙所があった。城戸がスーツの裏ポケットから白地に赤い丸印のタバコの紙箱を取り出す間に、浅倉もまた、ポケットからタバコの紙箱を取り出した。紙箱の中にタバコと一緒に入れておいた100円ライターを引き抜き、火を灯して、タバコを咥える城戸の前に差し出す。城戸はニッコリ笑って「ありがとぉ」と言ってから、浅倉の手の中に灯されたライターの紅に、スイと額を寄せた。ライターの灯りに照らされて、城戸の顔が薄暗闇の中に数瞬、ぼんやりと浮かび上がる。やがてそれが薄闇の中に沈んでいき、それと引き換えにフーー、と息を吐く音がした。男の吐き出す煙の、甘みの混じった香ばしい匂いが、浅倉の鼻腔をくすぐった。
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