anoco_enst
CAN’T MAKEこはく姉と司のはなしの捏造モノローグ書き出し いつか書きたいけど書くのも野暮というか無粋な気がするので書けん……書き出しだけ書くと満足するので供養それはあたしがそれまで手に取ったものたちの中でいっとうきれいな、あったかい感触やった。あたしの人生にしては、珍しく。だからこはくにあげた。あげたいと思った。だってそうやろ、世界でいちばん愛おしくてかわいいあたしの弟は本来そういうきれいであったかいものに囲まれて生きるべきやのに、憐れなこはくはそれをひとっつも知らんまま冷たい座敷牢で泣きも笑いもせんと生きとる。そんなことあってええはずないやろ。だから、あげた。あたしがあげられるいちばんきれいであったかいやつ、ぜんぶ。――かくしてはじめてのお友達を失ったあたしやったけど、不思議とさみしくはなかった。それはこはくがときおり「お友達」の話をぽそぽそとしてくれていたからかもしれないし、そのこはくの表情がやわらかくくるくると動いていたからかもしれない。もっと本質的には――生きる意味やら目的やらそんなたいそうなもんではあれへんけど、たしかにあの日の記憶はあたしの中でずうっと光っとったんや。
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