Asahikawa_kamo
PASTgnzkが官史として神と会話しているだけの話です。vlzメイン。オーマやそこに住まう神の架空捏造を全力でぶん回しています。#みんなで作る虹物語 という企画に投稿したものです。
夏の桜 その日、弦月は通り雨と共に届けられた季節外れの香りに、ふと視線を彷徨わせた。傍らに坐していた神は弦月にとっては馴染みの方であったが故か、その方もまた、さあっと降り注ぐ温かな水滴を眺めては、おやと声を上げる。
「咲いたようだね」
「ええ。今年も見事に」
「空の子は帰らないのかい」
「忙しいそうで。寧ろ帰ろうとしていたんですけれど、無理するなって寝台へ押し込んできました」
「おやおや。散る際までに逢えると良いのだけれど」
「そうですね」
ゆるやかに首を擡げて、弦月は視線を隣の方へと向ける。白布に隠れたその表情を読み取ることは出来ないが、おおよそ口振りと声色が何処か明るく跳ねていたのを聞くに、きっと楽しそうにしているのだろう。その香りから思い起こされる影を瞼の裏側に映し出しつつ、以前隣の方が昔ながらの友であると話していたなと少しだけ思い出してから、成程と目を細めた。
2784「咲いたようだね」
「ええ。今年も見事に」
「空の子は帰らないのかい」
「忙しいそうで。寧ろ帰ろうとしていたんですけれど、無理するなって寝台へ押し込んできました」
「おやおや。散る際までに逢えると良いのだけれど」
「そうですね」
ゆるやかに首を擡げて、弦月は視線を隣の方へと向ける。白布に隠れたその表情を読み取ることは出来ないが、おおよそ口振りと声色が何処か明るく跳ねていたのを聞くに、きっと楽しそうにしているのだろう。その香りから思い起こされる影を瞼の裏側に映し出しつつ、以前隣の方が昔ながらの友であると話していたなと少しだけ思い出してから、成程と目を細めた。