転生の毛玉
DOODLE【BP】#共通お題短文チャレンジ
にょデビ!
この感情の名前は「見て、にょーりくん」
オカルト部門から帰る道半ば、デビスくんはスマートフォンの画面を僕に突き出してきた。
17時30分の表示。
すっかり秋も深まってきたこの時期、とっくに日は落ちている。その時刻を示すスマートフォンの画面だけがこうこうと光る。どこかうそ寒いような気がした。実際、空気は冷えているが。
「ええと、デビスくん。この時間がどうかしたの」
「え?」
デビスくんは驚いたような焦ったような顔をして画面を覗き込んだ、それから「あっ」と声を上げる。
「電源ボタン押してロックかけちゃったみたいだ。ごめんごめん、フヒィッ」
デビスくんはスマートフォンの画面をたぷたぷと操作する、そして改めて僕に画面を見せた。
「『当選』?」
2089オカルト部門から帰る道半ば、デビスくんはスマートフォンの画面を僕に突き出してきた。
17時30分の表示。
すっかり秋も深まってきたこの時期、とっくに日は落ちている。その時刻を示すスマートフォンの画面だけがこうこうと光る。どこかうそ寒いような気がした。実際、空気は冷えているが。
「ええと、デビスくん。この時間がどうかしたの」
「え?」
デビスくんは驚いたような焦ったような顔をして画面を覗き込んだ、それから「あっ」と声を上げる。
「電源ボタン押してロックかけちゃったみたいだ。ごめんごめん、フヒィッ」
デビスくんはスマートフォンの画面をたぷたぷと操作する、そして改めて僕に画面を見せた。
「『当選』?」
転生の毛玉
DOODLE #共通お題短文チャレンジS.Y.さんのお題から。コカです
誰よりも賢く、誰よりも───「あかんかったな」
「なぁ」
ボクの返事に、相方────カースケは羽根を震わせる。
秋の夜。天気予報いわく、11月上旬にしては暖かいらしい風が、羽毛に刺さる。すっかり陽が沈むのが早くなった街角には、ちらちらと街灯が揺れる。ボクらは同居するアパートへ続く道を歩いていた。
「今年も3回戦落ちや」
「な」
「数字つかんとこ行きたい」
「な」
ボクはたった一音で返し続ける。漫才の頂上を決めるその大会。優勝者、或いは功績を残した者には人生の転機が訪れるというその大会。
ボクらは、今日、今年分のその階段を切り落とされた。
カースケは天を仰ぐ。ボクもその雰囲気を感じ取って、ちら、と上空を見た。すっかり暗くなった夜空にはビリビリウオの放つ光がちりちりと揺れている。
1714「なぁ」
ボクの返事に、相方────カースケは羽根を震わせる。
秋の夜。天気予報いわく、11月上旬にしては暖かいらしい風が、羽毛に刺さる。すっかり陽が沈むのが早くなった街角には、ちらちらと街灯が揺れる。ボクらは同居するアパートへ続く道を歩いていた。
「今年も3回戦落ちや」
「な」
「数字つかんとこ行きたい」
「な」
ボクはたった一音で返し続ける。漫才の頂上を決めるその大会。優勝者、或いは功績を残した者には人生の転機が訪れるというその大会。
ボクらは、今日、今年分のその階段を切り落とされた。
カースケは天を仰ぐ。ボクもその雰囲気を感じ取って、ちら、と上空を見た。すっかり暗くなった夜空にはビリビリウオの放つ光がちりちりと揺れている。
転生の毛玉
DOODLE #共通お題短文チャレンジ【L3】
次五、まったり、昼間、2000文字程度、です。
流る柳よ舟を漕げ太陽の光は高く、天窓からさんさんと降り注ぐ。
その眩しさに昼寝から目を覚まして、深く被っていた帽子が脱げ落ちていたことに気づいた。
「くぁ」
大欠伸をして体を伸ばす。革靴の脚を組み替える。革張りのソファがわずかに悲鳴を上げた。アジトの中で礼儀など気にしない、気にする必要もない。もっとも、外で気にするかと言われれば、泥棒やってますのでお察しくださいよ、という所だ。
「目を覚ましたか」
「ン」
声のする方に顔を向けた。部屋の隅、陽の光から逃げるような所に五ヱ門が座っていた。刀の手入れをしていたのか、気配も息の音も、或いは心音さえも聞き逃していた。
「刀とのお喋りは終わったか」
俺が尋ねると、五ヱ門は少し目を細めてから、す、と頷いた。その首の動きさえも、振り下ろされる刀を思わせる静かなもの。
2161その眩しさに昼寝から目を覚まして、深く被っていた帽子が脱げ落ちていたことに気づいた。
「くぁ」
大欠伸をして体を伸ばす。革靴の脚を組み替える。革張りのソファがわずかに悲鳴を上げた。アジトの中で礼儀など気にしない、気にする必要もない。もっとも、外で気にするかと言われれば、泥棒やってますのでお察しくださいよ、という所だ。
「目を覚ましたか」
「ン」
声のする方に顔を向けた。部屋の隅、陽の光から逃げるような所に五ヱ門が座っていた。刀の手入れをしていたのか、気配も息の音も、或いは心音さえも聞き逃していた。
「刀とのお喋りは終わったか」
俺が尋ねると、五ヱ門は少し目を細めてから、す、と頷いた。その首の動きさえも、振り下ろされる刀を思わせる静かなもの。