▶︎古井◀︎
DONEファ通準拠(?)の初期チェモのはなし 雨に打たれたアスファルトに赤い靄が広がった。踏みつけにされた節々が痛み、げほ、と吐き出した咳には、僅かに血が混じっていた。蹴り飛ばされた拍子に口内のどこかが切れたのだろう。モクマが歯を噛み締めると、鉄錆の味がじんわりと舌に広がっていった。頬が冷たい。水浸しの地面に転がされたせいで、雨水が服にしみこんで気持ちが悪かった。
今宵は、ナデシコから割り振られた、とある「おつかい」――裏社会との繋がりがある某企業への潜入調査の日だった。途中あったトラブルもどうにか片付けて与えられた任務も終え、簡易的な報告も済ませてあとは帰るだけ、といったところだった。「話があります」そういって連れ込まれた繁華街の路地裏にモクマは今、這いつくばっていた。
3194今宵は、ナデシコから割り振られた、とある「おつかい」――裏社会との繋がりがある某企業への潜入調査の日だった。途中あったトラブルもどうにか片付けて与えられた任務も終え、簡易的な報告も済ませてあとは帰るだけ、といったところだった。「話があります」そういって連れ込まれた繁華街の路地裏にモクマは今、這いつくばっていた。