mkm_ao
PAST🪢「ほどいて、」2022/5/3発行のジョーチェリ緊縛アンソロジー「桜華乱漫」に寄稿させていただいた作品です✨
🌟8月インテで紙の本になります!!
詳細 https://poipiku.com/1973723/9012836.html
自家通販 https://mkmatome.booth.pm/items/5266495
目隠しをされてでもいるような闇の底で、薫は浅く息をしている。
深い呼吸を妨げているのは、着物の胸の上を幾重にも横切っている頑丈な麻縄だ。その縄によって、薫の両腕は身体に密着させられ、両の手首は固く戒められている。
は、と息をこぼす薫の背後で、誰かが縄の端をぐっと引いた。薫はわずかにのけぞり、かぶりを振って抵抗の意思を示す。うっすらと笑う気配がして、頭の中に直接、艶めいた囁きが響く。
(どうして? こうされたかったんだろう……?)
薫は目を閉じ、唇を噛む。
背後の誰かが、今度ははっきりと声を立てて笑う——
閉店後のシア・ラ・ルーチェ、定位置のカウンター席で虎次郎と並んで酒肴とワインを楽しみながら、薫はふと、今朝見た夢について打ち明けてみる気になった。
10608深い呼吸を妨げているのは、着物の胸の上を幾重にも横切っている頑丈な麻縄だ。その縄によって、薫の両腕は身体に密着させられ、両の手首は固く戒められている。
は、と息をこぼす薫の背後で、誰かが縄の端をぐっと引いた。薫はわずかにのけぞり、かぶりを振って抵抗の意思を示す。うっすらと笑う気配がして、頭の中に直接、艶めいた囁きが響く。
(どうして? こうされたかったんだろう……?)
薫は目を閉じ、唇を噛む。
背後の誰かが、今度ははっきりと声を立てて笑う——
閉店後のシア・ラ・ルーチェ、定位置のカウンター席で虎次郎と並んで酒肴とワインを楽しみながら、薫はふと、今朝見た夢について打ち明けてみる気になった。