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DONEsc16受「噂」ライスコ その日の彼は荒々しかった。普段は怪しくも柔和な色の表情はむっすりとしていて、大きな目元はそれはもう据わりこんでいる。田舎のコンビニ前のヤンキーにも劣らない。口もへの字に曲がっている。誰がどう見ても不機嫌だとわかる様相だ。そんな彼が大きく開いた足をわざとらしく踏み鳴らして進む先は都心部にある低層マンションだった。ズカズカと素早くそして粗暴にエレベーターに乗り込み最上階のボタンを押した。同時に彼の柳眉がグッと寄る。扉を閉めるためのボタンに描かれた向き合う三角マークですらいまの彼には苛立ちの後押しにしかならない。
ワンフロアに単身用住戸が五戸、上階二階のみワンフロアにファミリータイプの住戸が一戸。この建物に住む人間のほとんどは上階二階にすむ人間を知らない。正確には誰が最上階に住んでいて、誰がその下の階に住んでいるのか判別が出来ていない。理由は簡単だ。その階から乗り込む人間もその階に降りる人間も確認出来たことがないからだ。上階二階の住人が同じ人物であるなど、知りもしないのだ。
3085ワンフロアに単身用住戸が五戸、上階二階のみワンフロアにファミリータイプの住戸が一戸。この建物に住む人間のほとんどは上階二階にすむ人間を知らない。正確には誰が最上階に住んでいて、誰がその下の階に住んでいるのか判別が出来ていない。理由は簡単だ。その階から乗り込む人間もその階に降りる人間も確認出来たことがないからだ。上階二階の住人が同じ人物であるなど、知りもしないのだ。