specialskytea_
PROGRESS朝菊確かにこの腕の中にあったはずなのに、魚が空を泳ごうと、太陽が光を失おうと、決して離しはしないと誓ったのに。どうしてお前は、ここにいないんだ。
金烏が羽ばたくのを止めているというのに、この場所は酷く眩しい。
花々が噂話して、小鳥が囀って、こんなに気持ちが良いのに世界は水に眠ってる。
呼吸が出来ないはずなのに酸素を求めて喘ぐこともない。
ここはどこなんだろう、なんて疑問より真っ先に浮かんだのは感嘆だった。
陳腐な美への賞賛と好奇心に心が攫われる。
こんな場所には生まれてこの方訪れたことがないはずなのに、懐かしさどころか愛おしさすら湧き出る。
「妖精さん達の悪戯か?それにしたって大掛かり過ぎる」
自分自身が肉体を持っているのか、それもと精神だけなのか、それすら分からない。
どちらにしたって妖精さん達だけではこんな魔法は不可能……だと思う、多分。
「敵意は……感じない、むしろ心地いい魔力だ。陽だまりにいるみたいな」
ぐるりと当たりを見回せば、見覚えのあるティーセット。
近寄ればお気に入りの紅茶の香りとティーカップが2つ。
ティーカップが、2つある。
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