まさのき
DONEなんかそういう台本を演じてるテイで読んでくれよな。野ばらの君、あるいはリラの騎士のためのスケッチ
二つの影が走っている。
むせかえるリラの花壇、夜露のいろの庭園に、二つの影が伸びている。
いっぽうは、片腹を押さえるような格好で、勢いこんで駆けてゆく。ひょっとしたら内臓を痛めているのかもしれない。額には玉の汗をのせ、白いほほには無残な鉤裂きの傷を作って、丹精に敷き詰められた白煉瓦の回廊を、跳ねるように駆けてゆく。
もういっぽうは、右手に剣。
宝石の嵌まった、サーベルを握っている。
くちびるには薄らと笑みさえ浮かべ、あやしく光る瑠璃色の瞳を、獲物を追い詰めた獣のようにぎらつかせながら、もう一つの影を追っている。
夜闇のなかを、二つの影が、鞭のように走っている。
乱れ咲くリラの花弁があえかな香りをふり撒き、白亜の庭園を、夢幻のようにはかなく覆い尽くす。
2855二つの影が走っている。
むせかえるリラの花壇、夜露のいろの庭園に、二つの影が伸びている。
いっぽうは、片腹を押さえるような格好で、勢いこんで駆けてゆく。ひょっとしたら内臓を痛めているのかもしれない。額には玉の汗をのせ、白いほほには無残な鉤裂きの傷を作って、丹精に敷き詰められた白煉瓦の回廊を、跳ねるように駆けてゆく。
もういっぽうは、右手に剣。
宝石の嵌まった、サーベルを握っている。
くちびるには薄らと笑みさえ浮かべ、あやしく光る瑠璃色の瞳を、獲物を追い詰めた獣のようにぎらつかせながら、もう一つの影を追っている。
夜闇のなかを、二つの影が、鞭のように走っている。
乱れ咲くリラの花弁があえかな香りをふり撒き、白亜の庭園を、夢幻のようにはかなく覆い尽くす。