チンモク
PROGRESS支部で公開してる鍾魈連載小説の続きです。洞天小話 2章 後編(1) 岩王帝君との邂逅以来、金鵬は自暴自棄になっていた。何もかもがどうでもいい。こんなに酷く落ち込むのは、数百年前に魔神に囚われた直後以来かもしれなかった。
「…それは、自傷行為ではない?」
雪山の麓の拠点から帰離原の方角を見下ろし、無心に雪を頬張っていたときだった。
金鵬の背から、グラシャの声が問い掛けた。
口を利きたくなかったが、自然と口は開き、答えていた。
「…否。好んで口にしている」
「……岩王帝君との出会い方が、そんなに気に入らなかった?」
「……」
それは、図星だった。金鵬が抱いていた夢は、この男に捕らえられたときに潰えてしまったが——それでも、あれは無かった。
元凶に痛いところを突かれ、湧き上がってきた激情を、目を閉じ抑え込もうとする。
2763「…それは、自傷行為ではない?」
雪山の麓の拠点から帰離原の方角を見下ろし、無心に雪を頬張っていたときだった。
金鵬の背から、グラシャの声が問い掛けた。
口を利きたくなかったが、自然と口は開き、答えていた。
「…否。好んで口にしている」
「……岩王帝君との出会い方が、そんなに気に入らなかった?」
「……」
それは、図星だった。金鵬が抱いていた夢は、この男に捕らえられたときに潰えてしまったが——それでも、あれは無かった。
元凶に痛いところを突かれ、湧き上がってきた激情を、目を閉じ抑え込もうとする。