心房調律
TRAINING仁柳仁王が柳の素顔を見る話 中一→中二の春
うつくしい没個性 真昼を過ぎて日ざしは、青々とした銀杏の整列に幾分さえぎられた。三月下旬の空気は既に、半袖を素肌にまとわりつかせる気怠さを含んで立ち込めている。
並木の傘下に背中を預けて、俺は打ち合いのローテーションを見ていた。三分間隔で時計回りに、さまざまな人間が目の前のコートへやって来る。右の攻撃、左の守備。パワープレイヤーにテクニシャン。三年目の三年生に、十三年目の一年生。頭の中でシミュレートする。俺は、あいつに成れるのか――大半は、可。あいつにもそいつにも、おそらくは。
「丸井! 早く自分の練習に戻れ!」
「うぃーっす」
日の当たるグラウンドの真ん中から、先輩が怒鳴り声を木陰まで寄越す。時計回りの群衆がこちらを向くのを邪魔するように、薄い緑の球体を膨らます。去り際の視界の右端に、至極自然な“俺”の姿が映った。おーおー、なかなか似合っとるぜよ。気持ち丸めた上半身も、グリップを握る左手も。
5707並木の傘下に背中を預けて、俺は打ち合いのローテーションを見ていた。三分間隔で時計回りに、さまざまな人間が目の前のコートへやって来る。右の攻撃、左の守備。パワープレイヤーにテクニシャン。三年目の三年生に、十三年目の一年生。頭の中でシミュレートする。俺は、あいつに成れるのか――大半は、可。あいつにもそいつにも、おそらくは。
「丸井! 早く自分の練習に戻れ!」
「うぃーっす」
日の当たるグラウンドの真ん中から、先輩が怒鳴り声を木陰まで寄越す。時計回りの群衆がこちらを向くのを邪魔するように、薄い緑の球体を膨らます。去り際の視界の右端に、至極自然な“俺”の姿が映った。おーおー、なかなか似合っとるぜよ。気持ち丸めた上半身も、グリップを握る左手も。