夏祭り 心地いい大きな太鼓の音と、夏独特の湿った生ぬるい空気の中を黒羽と歩く。夜店の眩しい電球に誘われる蛾のように、似たような服を着た人々が集まっていた。
オレ達も例に外れることなく、同じように明かりに吸い寄せられていく。顔も判別しにくく、似たような恰好、そしてこの人混み――「こんな状況じゃ犯人の特定に時間がかかりそうだ」――頭の中で浮かんでいた考えが自分の声で聞こえてきてびっくりする。思わず隣を見れば、いつの間にか手に入れたらしいたこ焼きを片手に、呆れたような顔の黒羽がいた。
「人の考えを読むんじゃねーよ」
「オメーの頭ン中物騒すぎだろ」
せっかく祭りに来てんのにとボヤく同じ顔に、ほんの少しだけ申し訳なくなるが「しょーがねーだろ、職業病なんだよ」と憎まれ口を返してしまう。そんなオレの様子に黒羽は酷く楽し気に笑いながら、オレの口に熱々のたこ焼きを押し込んできた。熱っ!
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