渇望と羨望──十年前 騎士団詰所
城壁に囲まれた広場でユリウスは片膝を突く。激しい運動で軽い貧血を起こしていたが、なんとか自身を奮い立たせる。
騎士団入隊試験の時の事だ。髪を後ろに結い上げ、騎士見習いの衣装を身に纏って、たくさんの同年代の少年少女の中にいた。
ユリウスにとっては初めての経験だ。公爵家に預けられてからというもの、同世代との関わりは特に薄かった。
剣術の経験など、簡単なマナー程度にしか家庭教師は行わなかったから、ユリウスは周囲からは明らかに浮いていた。
ただ知識だけで立ち回り、剣を振るっている。
模擬剣とはいえ当たれば痛いし、相手も入団の為ならば容赦はない。しかし後がないのはユリウスも同じで、ふらつく足取りのまま何戦かを終えた。
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